アセチルヒアルロン酸Naは、ヒアルロン酸Naをアセチル化して作る誘導体で、化粧品表示名称の配合目的は「保水剤」ひとつだけが登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。有効成分ではなく、化粧品や医薬部外品に添加成分として入る。

本記事の軸は、ヒアルロン酸Naに1か所だけ手を入れた結果として、登録上の扱いが親と別になることである。親のヒアルロン酸Naの配合目的は「皮膚コンディショニング剤(未分類)」で、「保水剤」は登録されていない。米国の安全性評価でも、同じ報告に並ぶ7つのヒアルロン酸のうち、本成分だけが機能を「humectant(保水剤)のみ」と書かれている(出典: CIR Final Report 2023)。日本と米国の別々の登録が、同じ向きに分かれている成分である。成分表で「ヒアルロン酸Na」の近くに並ぶことが多い名前だが、原料の通称「スーパーヒアルロン酸」の語からどこまで読めるのかも含めて整理する。

1. アセチルヒアルロン酸Naの基本

1.1 何の成分か

化粧品表示名称の定義は「本品は、ヒアルロン酸ナトリウムをアセチル化したものであり、次の化学式で表される。」で、成分番号は555018、INCI名は Sodium Acetylated Hyaluronate である(出典: Cosmetic-Info.jp)。収載は「化粧品の成分表示名称リスト」No.3(1999年11月8日発行)で、1990年代から化粧品表示名称として立っている名前になる。

アセチル化とは、分子が持つ水酸基(-OH)の水素をアセチル基(CH3CO-)に置き換える操作を指す。米国の Cosmetic Ingredient Review(CIR)の最終報告では、本成分の定義を「Sodium Acetylated Hyaluronate is the acetyl ester of Sodium Hyaluronate(ヒアルロン酸ナトリウムのアセチルエステル)」とし、構造図の注記で「R がナトリウムで、1つ以上の水酸基がアセチル化されている」と書いている(出典: CIR Final Report 2023)。「1つ以上」という書き方が示すとおり、どの水酸基がいくつ置き換わっているかは名前からは決まらない。

CAS番号は、Cosmetic-Info.jp の化粧品表示名称ページの CAS RN 欄が空欄で、規制分類欄・有機性値・無機性値の各欄にも記載がない(出典: Cosmetic-Info.jp)。番号で本成分を特定することはできない。

原料としては粉末で流通する。原料販売元の進栄化学は、自社製品「アセチルヒアルロン酸ナトリウム SF2」の性状を粉末、推奨配合量を0.05%〜0.1%と案内している(出典: 進栄化学 製品ページ)。

規制上は、有効成分ではない添加成分に分類される。厚生労働省の『いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト』に「ヒアルロン」の語は見当たらない。ただし同リストは有効成分の規格と分量の前例を集めた文書で、載っていないことは有効成分になれない根拠ではない。

なお、化粧品に使われるヒアルロン酸類の由来について、CIRの最終報告は「細菌の発酵か鶏冠のいずれかから得られる」と要約している(出典: CIR Final Report 2023)。本成分もこの範囲の原料をアセチル化して作られることになるが、個々の原料がどちらの由来かは成分表からは分からない。

1.2 ヒアルロン酸Naとの関係 ─ 定義の1文で何が変わるか

本成分の定義は、親のヒアルロン酸Naを名指しして「それをアセチル化したもの」と書かれている。親の側の定義は「本品は、ヒアルロン酸(*)のナトリウム塩である。」で、こちらはさらに前の段階のヒアルロン酸を名指ししている(出典: Cosmetic-Info.jp)。定義が数珠つなぎになっている関係になる。

登録の内容を並べると、変わるところと変わらないところがはっきりする。

項目アセチルヒアルロン酸Na(本成分)ヒアルロン酸Na
成分番号555018552063
定義ヒアルロン酸ナトリウムをアセチル化したものヒアルロン酸のナトリウム塩
INCI名Sodium Acetylated HyaluronateSodium Hyaluronate
配合目的保水剤皮膚コンディショニング剤(未分類)
CAS RN欄記載なし9067-32-7
収載リストNo.3(1999年11月8日発行)記載なし
市販化粧品(同DB)5475件29174件

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・2026年9月確認)

この表でいちばん重要なのは配合目的の行である。日本の化粧品表示名称では、配合目的は名前ごとに登録される。親のヒアルロン酸Naに登録されているのは皮膚コンディショニング剤(未分類)だけで、保水剤は入っていない。逆に本成分に登録されているのは保水剤だけで、皮膚コンディショニング剤は入っていない。アセチル化という1か所の変更で、登録上の語が入れ替わっている。

同じ分かれ方は、米国の登録でも起きている。CIRの最終報告は、評価した7つのヒアルロン酸のうち「大半は皮膚および/または毛髪のコンディショニング剤として機能すると報告されている」としたうえで、本成分については「化粧品では humectant としてのみ機能すると報告されている」と書き分けている(出典: CIR Final Report 2023)。報告のTable 1でも、本成分の Function 欄は Humectants の1語だけで、親のヒアルロン酸Naは Skin-Conditioning Agents - Miscellaneous になっている。

日本の配合目的と米国の機能分類は別々の制度だが、本成分については両方が同じ向きに分かれている。名前が似ていても、登録の上では別の役割を割り当てられた成分だと読める。

ただし注意したいのは、この分かれ方は登録上の分類の話であって、保湿力の優劣の話ではないという点である。「保水剤」も「皮膚コンディショニング剤」も、どんな目的で処方に入れる成分かを示す分類名で、効能の強さを表す言葉ではない。分類が1つに絞られていることを「保水に特化していて効く」と読むことはできないし、親が保水剤に登録されていないことを「保水しない」と読むこともできない。

1.3 「1か所だけ変えた成分」のクラスタで見る

DappNotesでは、すでに記事のある成分に1か所だけ手を入れた成分を、6本まとめて整理している。どこを変えたのかは、どれも化粧品表示名称の定義の文に書かれている。

成分元になる成分変えた1か所(定義の文から)配合目的の動き
アセチルヒアルロン酸Na(本成分)ヒアルロン酸Naアセチル化する別の語になる(保水剤)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルヒドロキシプロピルメチルセルロースステアリルグリシジルエーテルを反応させる5つから1つに狭くなる
ステアロイルグルタミン酸Naココイルグルタミン酸Na付く脂肪酸が長くなる1つから3つに広がる
トリラウレス-4リン酸ラウレス-4カルボン酸Na頭がカルボン酸からリン酸になる洗浄剤から乳化剤へ入れ替わる
アクリレーツコポリマー(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー架橋をやめる増粘から皮膜・整髪ほかへ
ロイシンイソロイシン枝分かれの位置が違う完全に同じ

(出典: 各成分の Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)

この並びで本成分の位置を見ると、変更が最も小さい部類でありながら、配合目的の語が親と重ならない側にいることが分かる。いちばん下のロイシンとイソロイシンは、構造が違うのに配合目的が完全に同じで、対照になっている。

読者にとっての実用は、成分表で似た名前が並んだときに「名前のどこが違うのか」と「その違いが配合の狙いに効いているのかどうか」を切り分けられることにある。名前が似ている=同じ成分、でもないし、名前が違う=働きが違う、でもない。

1.4 どんな製品に配合されるか

Cosmetic-Info.jp の市販化粧品データベースでは、2026年9月の確認時点で本成分を含む化粧品が5475件登録されている。親のヒアルロン酸Naの29174件と比べると、およそ5分の1の規模になる(出典: Cosmetic-Info.jp)。ヒアルロン酸の誘導体としては、単独で数千件規模に届いている名前である。

米国のVCRP(FDAの自主登録制度)の2023年データでは、本成分の使用報告は455製剤で、うち肌に残す製品が414、洗い流す製品が41だった(出典: CIR Final Report 2023)。製品分野の内訳では、保湿製品122・口紅68・顔と首の製品63・ファンデーション43・目のまわりの製品45などが並び、ヘア製品は2件しかない。肌に残すスキンケアとメイクアップに寄った成分という実態が読める。

DappNotesの商品マスターで本成分を確認できたのは、次の3品である。

商品区分剤形表示位置/全成分数
NILE 濃密泡洗顔 クリーム洗顔せっけん化粧品洗顔料15/62
肌ラボ 極潤ヒアルロン液化粧品化粧水6/15
HOLO BELL トータルスキンケア保湿ジェル化粧品保湿ジェル5/40

(出典: 各社公式サイト・公式通販の全成分表示)

3品とも化粧品で、医薬部外品の商品はない。剤形は肌に残す化粧水・ジェルが2品、洗い流す洗顔料が1品になる。

3品に共通するのは、いずれの成分表にも親のヒアルロン酸Naが一緒に入っていることである(§3.4)。本成分は親を置き換える位置ではなく、親と並べて書かれる位置に現れている。

原料としては、進栄化学が「アセチルヒアルロン酸ナトリウム SF2」を出しており、同社は製品ページでこの原料を「化粧品、医薬部外品に配合可能なスーパーヒアルロン酸Na」と案内している(出典: 進栄化学 製品ページ)。この「スーパーヒアルロン酸」は原料の側の呼び名で、化粧品表示名称でも医薬部外品表示名称でもない(§2.3)。Cosmetic-Info.jp の関連原料欄では、本成分を含む原料が5件、本成分だけの原料が3件登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。同じ表示名称でも、原料の銘柄・アセチル化の程度・分子量はメーカーごとに違う。

1.5 メンズ視点での見方

3品のうち、HOLO BELLの保湿ジェルとNILEの洗顔料はDappNotesの商品マスターでメンズスキンケアに分類している商品で、肌ラボの化粧水は男女とも使う商品である。洗顔料・化粧水・オールインワンのジェルと剤形がばらけていて、特定の用途に限られた成分ではない。

メンズの読み方で押さえたいのは、成分表に「ヒアルロン酸Na」と「アセチルヒアルロン酸Na」が並んでいても、それは2種類のヒアルロン酸を入れたという事実であって、保湿設計の良し悪しを示す指標ではない、という点である。皮脂が多くテカリやすい肌でも、乾燥でつっぱる肌でも、商品を選ぶときに効いてくるのは洗浄成分の系統(洗顔料の場合)や、保湿の骨格をどう組んでいるか(化粧水・ジェルの場合)で、ヒアルロン酸の種類が何個並んでいるかではない。

もう一点、髭剃り後のような肌が敏感になりやすい場面でも、本成分そのものが刺激の原因として報告されているわけではない(§3.1)。使ってしみる・赤くなるといった反応が出たときは、処方全体の防腐剤・香料・エタノールなども含めて疑うのが現実的になる。

2. 期待される働き・効果

2.1 登録された配合目的から読めること

化粧品表示名称で公式に登録されている配合目的は「保水剤」の1つだけである(出典: Cosmetic-Info.jp)。

保水剤: 処方や肌の表面で水分を保つ目的の成分をまとめた分類である。分類名であって、どれだけ水を保つか・どれくらい持続するかを示す値ではない。同じ分類には、グリセリンやBGのような小さな分子の保湿剤から、多糖類の大きな分子まで幅広く入る。

米国側の登録でも、本成分の機能は Humectants の1語である(出典: CIR Final Report 2023)。Humectant は日本語の保水剤・湿潤剤におおむね対応する分類で、日米で同じ向きの登録になっている。

逆に言えば、登録から読めるのはここまでで、次のようなことは配合目的からは出てこない。

  • どの水酸基がどれだけアセチル化されているか(定義は「1つ以上」としか書かない)
  • 親のヒアルロン酸Naと比べてどちらが保湿に優れるか(分類名に優劣はない)
  • 肌のどの層に届くか(配合目的は層を指定しない)

2.2 一般的な効能範囲

本成分を配合した化粧品で表現できるのは、化粧品の効能範囲のうち「肌にうるおいを与える」「皮膚の水分を保持し、乾燥を防ぐ」「肌をすこやかに保つ」といった、保湿・整肌の枠組みの表現になる。

逆に、次のような表現を本成分の効能として書くことはできない。

  • シワを改善する、ハリを取り戻す
  • シミ・くすみを防ぐ、肌を白くする
  • 真皮のヒアルロン酸を増やす、肌を再生する
  • 肌の奥(真皮)まで届いて内側から潤す

本成分は医薬部外品の有効成分ではないため、承認された効能効果というものが存在しない。医薬部外品の商品に配合されている場合も、その商品の効能を担っているのは別に定められた有効成分であって、本成分ではない。

2.3 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は4つある。

1.「スーパーヒアルロン酸」を成分名だと思う誤解。この語は原料販売元が自社の原料を説明するときに使っている呼び名で、化粧品表示名称でも医薬部外品表示名称でもない(出典: 進栄化学 製品ページ)。成分表に印刷されるのはあくまで「アセチルヒアルロン酸Na」で、「スーパーヒアルロン酸」と書かれることはない。原料の通称は、その原料を採用した商品の説明文やメディアの記事に登場するもので、公式の登録名と混ぜて読まないほうがよい。

2.「2倍の保湿力」を化粧品の効能として読む誤解。進栄化学は自社の角層抱水テストの結果として「アセチルヒアルロン酸Naの角層抱水能力は、通常のヒアルロン酸Naの2倍」と記載し、原料の特長として「一般的な高分子ヒアルロン酸Naの2倍の保湿性」と案内している(出典: 進栄化学 製品ページ)。これは原料販売元が自社の試験にもとづいて述べている原料の説明で、化粧品の効能として認められた内容ではない。試験方法も「同じ濃度の水溶液を用い、乾燥後の水分損失量による水分結合率を測定する」という同社の記載までで、第三者が追試した結果として公表されているものではない。数字の大小をそのまま商品の効き目の差として読むことはできない。

3. アセチル化の説明を、肌への作用の説明と取り違える誤解。進栄化学は「ヒアルロン酸Naの水酸基の一部をアセチル基に置き換え、疎水性と親水性の性質を持たせています。これにより肌への吸着性を高めています。」と説明している(出典: 進栄化学 製品ページ)。これも原料販売元による原料の説明で、化粧品に配合されたときに肌の上で何が起きるかを保証するものではない。なお、水酸基がアセチル化されていること自体は米国CIRの定義にも書かれており(§1.1)、構造の説明としては一次資料と整合する。分けて読むべきなのは、構造の記述(一次資料にある)と、そこから導かれる肌への効果の主張(原料販売元の説明)である。

4.「浸透」「肌の奥まで」と結びつける誤解。CIRの最終報告には、ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid)の3種類の分子量の溶液をヒトの皮膚片に塗って浸透を調べた試験が載っており、分子量が低いものから順に表皮の深さ100µm・50µm・25µmで検出されたが、いずれの分子量でも大部分は角層(皮膚表面からおよそ25µm)にとどまったと要約されている(出典: CIR Final Report 2023)。この試験の対象はヒアルロン酸であって本成分ではないが、注入する施術で真皮に入れるヒアルロン酸と、化粧品に配合されたヒアルロン酸類は別の話として扱う必要がある。

3. 安全性・注意点

3.1 CIRの評価: ヒアルロン酸7成分の1つとして条件なしで安全

米国の Cosmetic Ingredient Review(CIR)は、2023年7月7日公開の最終報告でヒアルロン酸類7成分をまとめて評価し、次のように結論している(出典: CIR Final Report 2023)。

専門家パネルは、以下の7つのヒアルロン酸系成分が、この安全性評価に記載された現在の使用実態と濃度において、化粧品に使用して安全であると結論した。

対象の7成分は、Hyaluronic Acid・Hydrolyzed Calcium Hyaluronate・Hydrolyzed Hyaluronic Acid・Hydrolyzed Sodium Hyaluronate・Potassium Hyaluronate・Sodium Acetylated Hyaluronate(本成分)・Sodium Hyaluronateである。

この結論で注目したいのは、条件が付いていないことである。CIRの結論には「刺激を起こさないように処方すれば(when formulated to be non-irritating)」のような条件が付くものがあるが、この報告の結論にはそうした但し書きがない。

本成分がこの評価の対象になった経緯も報告に書かれている。本成分と Hydrolyzed Hyaluronic Acid は、FDAのVCRPで報告された使用頻度の高さを理由に、2022年の優先評価リストに入った(出典: CIR Final Report 2023)。一方、親のヒアルロン酸Na を含む3成分(Hyaluronic Acid・Potassium Hyaluronate・Sodium Hyaluronate)は2009年にすでに評価されて安全と結論されており、再評価の時期が近いことから同じ報告にまとめられた。つまりこの報告は、親の再評価と、使用が増えた誘導体の新規評価が合流した形になっている。

ヒトでの試験としては、本成分を0.2%含む処方を使ったヒト反復パッチ試験(104名・希釈せずに試験)で感作は認められなかったと報告されている(出典: CIR Final Report 2023)。

3.2 使用実態と配合量の目安

Cosmetic-Info.jp の化粧品表示名称ページでは、本成分の規制分類欄に記載はない(出典: Cosmetic-Info.jp)。日本で一律の配合上限が示された成分ではなく、配合量は各メーカーが処方ごとに決める。

米国側の数字は、CIRの最終報告に集計が載っている。2023年のVCRP使用報告件数と、2021年の業界の濃度調査を、親と並べると次のようになる。

項目アセチルヒアルロン酸Na(本成分)ヒアルロン酸Na
使用報告(2023 VCRP)455製剤4713製剤
肌に残す製品4144317
洗い流す製品41394
濃度の範囲(2021調査)0.002 – 0.1%顔と首の製品で最大7.5%

(出典: CIR Final Report 2023 Table 4・Table 5)

読めるのは2つある。1つは、採用の数で約10分の1、濃度の上限では桁が違うということ。もう1つは、どちらも肌に残す製品に大きく偏っているということである。

濃度の上限については、原料販売元の推奨配合量と突き合わせると、独立した2つの情報が同じあたりに収まる。進栄化学の推奨配合量は0.05%〜0.1%で(出典: 進栄化学 製品ページ)、CIRが集計した使用濃度の上限も0.1%である(出典: CIR Final Report 2023)。日本の原料メーカーの推奨値と、米国の実際の配合濃度の集計値が、上限で一致していることになる。ただしこれは2つの資料がたまたま同じ値を示したという事実で、この値が上限として定められているという意味ではない。

製品分野ごとの細かい数字では、保湿製品で0.0085〜0.1%、顔と首の製品で0.1%、ファンデーションで0.002%といった値が報告されている(出典: CIR Final Report 2023 Table 5)。いずれも米国での2021年時点の集計で、個々の商品の配合量を示すものではない。

3.3 化粧品名と部外品名: 同じ物質を別の作り方で書く

化粧品と医薬部外品では、成分表示に使う名前の体系が異なる。化粧品は化粧品表示名称、医薬部外品は医薬部外品の表示名称で書く。本成分は、この2つの名前の作り方の違いがそのまま表れている例になる。

資料名前記載内容
化粧品表示名称アセチルヒアルロン酸Na成分番号555018・定義 ヒアルロン酸ナトリウムをアセチル化したもの
部外品添加物(Cosmetic-Info.jp)アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム規格コード99(別紙規格)・成分コード999999・本質欄 記載なし
原料販売元(進栄化学)アセチルヒアルロン酸ナトリウム SF2「化粧品、医薬部外品に配合可能」と案内

(出典: Cosmetic-Info.jp / 進栄化学 製品ページ)

化粧品側は「アセチル+ヒアルロン酸+Na」、部外品側は「アセチル化+ヒアルロン酸+ナトリウム」で、同じ操作と同じ塩を、略す・略さないの違いで書き分けている。化粧品表示名称は塩をNaと略し、部外品表示名称は「ナトリウム」と綴る。「アセチル」と「アセチル化」も、日本語としての作り方の差になる。指す物質が違うのではなく、名前の刻み方の流儀が違う。

この2つが本当に別の成分を指していないかは、名前の文字列で確かめられる。Cosmetic-Info.jp の化粧品表示名称を「アセチル化ヒアルロン酸」で検索すると0件で、部外品名と同じ文字列の化粧品表示名称は存在しない(出典: Cosmetic-Info.jp)。医薬部外品の成分表で「アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム」を見たときに、別の化粧品成分と取り違える心配はない。

部外品側の登録で特徴的なのは、規格コードが99(別紙規格)で、成分コードが999999、本質欄が空欄になっている点である(出典: Cosmetic-Info.jp)。医薬部外品の添加物には、公定の規格集に規格が載っているものと、承認申請ごとに別紙で規格を定めるものがあり、本成分は後者にあたる登録になっている。このため、部外品側の資料からは、化粧品表示名称の定義に相当する本質の文が読めない。この表示名称の市販医薬部外品は615件が登録されている(2026年9月確認)。

なお、日本化粧品工業連合会『医薬部外品の成分表示名称リスト』の平成20年版には、この名前は見当たらない。ただし同リストは当時の版であって、その後に加わった名前を含まない。載っていないことを「部外品では使えない」と読むことはできない。

3.4 配合商品の並びから読めること・読めないこと

表示位置から量は読まない。化粧品の全成分表示は、配合量1%を超える成分を多い順に書き、1%以下は順不同で書ける。どこからが1%以下かは表示されないため、5位・6位・15位といった位置から配合量の多い少ないは判断できない。本成分は米国の集計でも0.1%以下の帯で報告されている成分なので(§3.2)、成分表で上位に出ていても、上位の位置が多い配合量を意味するとは限らない。

読めるのは「一緒に出る」という事実まで。本成分が入る3品では、いずれも親のヒアルロン酸Naが同じ成分表に入っている。

商品ヒアルロン酸類の並び(表示位置)
肌ラボ 極潤ヒアルロン液ヒアルロン酸Na(4)→加水分解ヒアルロン酸(5)→アセチルヒアルロン酸Na(6)→乳酸球菌/ヒアルロン酸発酵液(7)
HOLO BELL トータルスキンケア保湿ジェルアセチルヒアルロン酸Na(5)→ヒアルロン酸Na(21)→加水分解ヒアルロン酸(22)
NILE 濃密泡洗顔 クリーム洗顔せっけんアセチルヒアルロン酸Na(15)→ヒアルロン酸Na(22)

(出典: 各社の全成分表示)

3品に共通するのは、本成分と親が同じ処方に並んでいることである。並ぶ順番は商品によって違い、本成分が先の商品も後の商品もある。1%以下の成分は順不同で書けるため、並びの前後関係や近さから、どちらを多く入れているか・同じ原料に由来するかを読み取ることはできない。書けるのは「ヒアルロン酸Naとアセチルヒアルロン酸Naが一緒に現れる」という出現の事実までである。

肌ラボの化粧水では、この2つに加えて加水分解ヒアルロン酸と発酵由来のヒアルロン酸が並ぶ。「ヒアルロン酸4種配合」のような書き方をする商品では、成分表のこの並びがその根拠になっている。ただし、種類の数は配合量の合計を示すものではなく、種類が多いほど保湿が強いという読み方はできない。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

本成分は単独で処方の主役になる成分ではなく、配合例では保湿の骨格の上に重ねられている。

親のヒアルロン酸Na: 3品すべてで一緒に入っている(§3.4)。置き換えではなく並記される関係になる。

加水分解ヒアルロン酸: 肌ラボの化粧水とHOLO BELLのジェルで一緒に並ぶ。ヒアルロン酸を酵素などで小さくした別の表示名称で、CIRの同じ報告で評価された7成分のうちの1つでもある(§3.1)。

BG・グリセリンなどの保湿の骨格: 肌ラボの化粧水とHOLO BELLのジェルではBGが2位、NILEの洗顔料ではグリセリンが3位に置かれている。処方の水分を保つ土台はこれらの成分が担い、本成分はその上に重ねる層にあたる。

セラミドNGなどの細胞間脂質系: HOLO BELLのジェルでは、本成分の直後にセラミドNG・セラミドNP・セラミドAPが並ぶ。水を抱える役割と、角層の脂質を補う役割は処方上の担当が違うため、両方を入れる設計は珍しくない。

4.2 注意したい組合せ

本成分について、化粧品処方で避けるべき組み合わせは、本稿で確認した資料では報告されていない。CIRの最終報告にも、他成分との併用に関する注意は記載されていない(出典: CIR Final Report 2023)。

実用上の注意は、成分どうしの相性よりも、読み方のほうにある。

  • ヒアルロン酸の種類の数で商品を選ぶこと: 何種類並んでいても、それぞれの量は表示から読めない(§3.4)
  • 「スーパー」の語で優劣を決めること: 原料の通称であって、登録名でも評価でもない(§2.3)
  • 同じ処方の他の成分を見落とすこと: 肌に合わないと感じたときは、防腐剤・香料・エタノールなど処方全体を疑う

4.3 ヒアルロン酸の誘導体の中での位置

CIRの最終報告のTable 1は、評価した7成分の定義と、国際成分辞書(wINCI)に登録された機能を並べている。日本語の成分表で見かける名前に対応させると、次のようになる(出典: CIR Final Report 2023 Table 1)。

成分(INCI名)定義(何をしたか)登録された機能
Sodium Acetylated Hyaluronate(本成分)ヒアルロン酸ナトリウムのアセチルエステルHumectants
Sodium Hyaluronateヒアルロン酸のナトリウム塩Skin-Conditioning Agents - Miscellaneous
Hyaluronic AcidN-アセチル-D-グルコサミンとグルクロン酸が結合した天然のムコ多糖Skin-Conditioning Agents - Miscellaneous; Viscosity Increasing Agents - Aqueous
Hydrolyzed Hyaluronic Acidヒアルロン酸を酸・酵素等で加水分解したものHair Conditioning Agents; Skin-Conditioning Agents - Humectant
Hydrolyzed Sodium Hyaluronateヒアルロン酸ナトリウムを加水分解したものSkin-Conditioning Agents - Miscellaneous
Hydrolyzed Calcium Hyaluronateヒアルロン酸のカルシウム塩を加水分解したものSkin-Conditioning Agents - Miscellaneous
Potassium Hyaluronateヒアルロン酸のカリウム塩Skin-Conditioning Agents - Miscellaneous

この表で、機能欄に Humectants だけが単独で立っているのは本成分である。加水分解ヒアルロン酸は Skin-Conditioning Agents の下位区分として Humectant を持つが、コンディショニング剤の枠の中に置かれている。保水の機能が分類の主語になっているのは本成分だけという並びになる。

塩の種類を変えたもの(カリウム塩・カルシウム塩)や、分子を小さくしたもの(加水分解)は、いずれも機能欄がコンディショニング剤側にとどまっている。7成分の中で、変更が機能の登録まで動かしたのはアセチル化だけ、という読み方ができる。

一方、日本の成分表でよく見かけるヒアルロン酸の誘導体のうち、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム(カチオン化したもの)やヒアルロン酸アスコルビルプロピル(ビタミンC由来の基を付けたもの)は、この7成分の中に入っていない。これは評価のまとめ方の問題で、対象外=安全性データが乏しい、という意味ではない(§5.2)。同じヒアルロン酸を出発点にしていても、何を付けたかによって、どの安全性評価の枠組みに入るかが変わる。

5. 使い方

5.1 推奨される使用シーン

本成分の有無で商品を選ぶ場面は、実際にはあまりない。配合例は洗顔料・化粧水・保湿ジェルで、本成分はどれでも処方の一部として入っている。

化粧水・保湿ジェル(肌に残す製品): 米国の使用報告でも9割が肌に残す製品だった(§3.2)。選ぶときに見るのは保湿の骨格(BG・グリセリンなど)、油分の有無、とろみや使い心地、香りの有無で、本成分は水を保つ層の構成要素の1つとして読めばよい。

洗顔料(洗い流す製品): 洗い流す製品での使用報告は米国でも41件と少ない。選ぶときに見るのは洗浄成分の系統と、自分の皮脂量・乾燥しやすさとの相性である。

いずれも、それぞれの商品の標準的な使い方に従えばよく、本成分のために特別な使い方をする必要はない。

5.2 期待できないこと・避けるべき使い方

本成分に期待できないことは、次のとおり。

  • シワ・ハリ・美白への作用: 化粧品表示名称の配合目的は保水剤の1つだけで、これらを本成分に期待することはできない(§2.2)
  • 真皮への到達: CIRの報告に載るヒアルロン酸の浸透試験でも、大部分は角層にとどまったと要約されている(§2.3)。注入する施術とは別の話になる
  • 「2倍」の数字を商品の効き目の差として読むこと: 原料販売元の自社試験の記載で、化粧品の効能として認められた内容ではない(§2.3)

もう1つ、避けたい読み方として、「CIRの7成分に入っていない誘導体は危ない」と受け取ることがある。CIRは構造の近い成分をまとめて評価する進め方をとっており、どの成分をどの報告に入れるかは評価の設計の問題である。ある名前が特定の報告に載っていないことは、その成分について集まっているデータの多い少ないとは別の話になる。

6. メンズ実用視点まとめ

メンズの成分表示でアセチルヒアルロン酸Naを見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。

  1. ヒアルロン酸Naに1か所手を入れた誘導体: 定義は「ヒアルロン酸ナトリウムをアセチル化したもの」。何個の水酸基が置き換わっているかは名前からは決まらない
  2. 登録された配合目的は保水剤ひとつ: 親のヒアルロン酸Naは皮膚コンディショニング剤(未分類)で、語が入れ替わっている。ただし分類名であって、保湿力の優劣を示す値ではない
  3. 「スーパーヒアルロン酸」は原料の通称: 成分表に印刷される名前でも、評価された呼び名でもない

皮脂が多くテカリやすい肌でも、髭剃りで乾燥しやすい肌でも、商品選びで効いてくるのは洗浄成分の系統と保湿の骨格である。ヒアルロン酸の種類が何個並んでいるかは、その判断の中心にはならない。成分表で親と一緒に並んでいるのを見たら、置き換えではなく重ねている設計だと読んでおけば十分になる。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. アセチルヒアルロン酸Naはどんな成分ですか?

ヒアルロン酸Naをアセチル化して作る誘導体です(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品表示名称の配合目的は「保水剤」の1つだけが登録されています。有効成分ではなく、化粧品や医薬部外品に添加成分として配合されます。米国の成分辞書でも機能は humectant(保水剤)のみとされています(出典: CIR Final Report 2023)。

Q2. ヒアルロン酸Naとは何が違うのですか?

定義の上では、ヒアルロン酸Naの水酸基の一部がアセチル基に置き換わっている点が違います。登録の上では、配合目的の語が違います。親のヒアルロン酸Naは皮膚コンディショニング剤(未分類)で保水剤の登録がなく、本成分は保水剤だけで皮膚コンディショニング剤の登録がありません(出典: Cosmetic-Info.jp)。ただしこれは分類の登録の話で、どちらが保湿に優れるかを示すものではありません。実際の商品では、両方が同じ成分表に並んでいることが多く、置き換えではなく重ねて使われています。

Q3. 「スーパーヒアルロン酸」と同じものですか?

「スーパーヒアルロン酸」は原料販売元が自社の原料を説明するときに使っている呼び名で、化粧品表示名称でも医薬部外品表示名称でもありません(出典: 進栄化学 製品ページ)。成分表に印刷されるのは「アセチルヒアルロン酸Na」です。原料の通称なので、同じ通称を使っていても原料の銘柄やアセチル化の程度は商品ごとに違います。

Q4. 「ヒアルロン酸Naの2倍の保湿力」は本当ですか?

原料販売元の進栄化学が、自社の角層抱水テストの結果として「アセチルヒアルロン酸Naの角層抱水能力は、通常のヒアルロン酸Naの2倍」と記載しています(出典: 進栄化学 製品ページ)。これは同社が自社試験にもとづいて述べている原料の説明で、化粧品の効能として認められた内容ではありません。試験方法の記載は「同じ濃度の水溶液を用い、乾燥後の水分損失量による水分結合率を測定する」までで、第三者の追試として公表されたものではありません。数字を商品の効き目の差として読むことはできません。

Q5. 安全性はどう評価されていますか?

米国のCIRは、2023年の最終報告でヒアルロン酸類7成分をまとめて評価し、本成分を含む7成分について、報告に記載された現在の使用実態と濃度で化粧品に使って安全と結論しています(出典: CIR Final Report 2023)。この結論には「刺激を起こさないように処方すれば」のような条件が付いていません。本成分を0.2%含む処方のヒト反復パッチ試験(104名)でも感作は認められていません。ただし、どんな成分でも処方全体で肌に合うかは決まるため、赤み・かゆみが出たら使用を中止してください。

Q6. 医薬部外品の成分表では何と書かれますか?

「アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム」です(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)。化粧品表示名称の「アセチルヒアルロン酸Na」と、略す・略さないの書き方が違うだけで、同じ操作と同じ塩を指しています。同じ文字列の化粧品表示名称は存在しないため、別の成分と取り違える心配はありません。

8. まとめ

アセチルヒアルロン酸Naは、ヒアルロン酸Naをアセチル化して作る誘導体で、化粧品表示名称の配合目的は「保水剤」の1つだけが登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。親のヒアルロン酸Naの配合目的は皮膚コンディショニング剤(未分類)で、保水剤は入っていない。米国の成分辞書の機能分類でも、同じ報告で評価された7成分のうち Humectants が単独で立っているのは本成分だけになる(出典: CIR Final Report 2023)。1か所のアセチル化が、日米それぞれの登録を同じ向きに動かしている成分である。

ただし、配合目的も機能分類も、どんな目的で処方に入れる成分かを示す分類名であって、保湿力の優劣を表す値ではない。分類が保水剤に絞られていることを「保水に特化していて効く」と読むことはできない。

安全性は、CIRが2023年の最終報告でヒアルロン酸類7成分をまとめて評価し、条件の付かない形で安全と結論している。使用実態は、米国の2023年集計で455製剤・濃度0.002〜0.1%で、親の4713製剤・最大7.5%とは採用の数でも濃度の桁でも差がある。原料販売元の推奨配合量0.05〜0.1%とも上限で一致する。

原料の通称「スーパーヒアルロン酸」や「2倍の保湿力」は、いずれも原料販売元の説明・自社試験の主張で、化粧品表示名称でも効能でもない。配合例の3品ではいずれも親のヒアルロン酸Naと一緒に並んでおり、置き換えではなく重ねる設計になっている。成分表でこの名前を見たら、ヒアルロン酸の種類の数で判断するのではなく、洗浄や保湿の骨格で商品を選び、その中の保水目的の成分の1つとして読むのが実用的な理解になる。

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