アーチチョーク葉エキスは、キク科のアーティチョーク(Cynara scolymus)の葉から得られる植物エキスで、INCI名は Cynara Scolymus (Artichoke) Leaf Extract。化粧品表示名称は「アーチチョーク葉エキス」、医薬部外品では「アーティチョークエキス」と表示される(出典: Cosmetic-Info.jp / 一丸ファルコス 製品情報)。配合目的は皮膚コンディショニング、つまり肌を整えることで、医薬部外品の有効成分ではない。

野菜として食べるのはつぼみ(花らい)だが、成分表示に載るのは葉のエキスである。本記事では、D2C系の医薬部外品オールインワン・美容液に共通して現れる植物エキス4つ(ビルベリー葉・ユキノシタ・アーティチョーク・アルピニアカツマダイ種子)の1本として、2点を整理する。1点目は「よく知られた部位と成分表に載る部位のずれ」、2点目は「化粧品名と部外品名がそろうか、割れるか」。アーティチョークは2点目で、化粧品名に部位ごとの名前が5つあるのに対し、部外品名は部位を含まない1つだけ、という特徴を持つ。

1. アーチチョーク葉エキスの基本

1.1 何の成分か

アーティチョーク(和名チョウセンアザミ)は、地中海沿岸の南ヨーロッパ・北アフリカ原産とされる大型の多年草で、アザミに似た花を咲かせる(出典: EMA/HMPC/194013/2017)。欧州薬局方では学名が Cynara scolymus L. から Cynara cardunculus L. に改められているが、化粧品の成分名(INCI)は現在も Cynara scolymus を使う。

化粧品表示名称「アーチチョーク葉エキス」の定義は「本品は、アーチチョーク Cynara scolymus の葉のエキスである。」で、2002年12月発行の化粧品の成分表示名称リスト No.12 に収載された(出典: Cosmetic-Info.jp)。旧称として ARTICHOKE (CYNARA SCOLYMUS) EXTRACT、ARTICHOKE EXTRACT が登録されており、以前の英名は部位を含んでいなかったことが分かる。配合目的は「皮膚コンディショニング剤」。欧州の成分データベース COSMILE Europe でも、葉の溶媒抽出物で機能は SKIN CONDITIONING と整理されている(出典: COSMILE Europe)。

葉にどんな成分が含まれるかは、欧州医薬品庁(EMA)のハーブ評価報告書が文献をまとめている(出典: EMA/HMPC/194013/2017)。

  • フェノール酸(最大2%): カフェ酸と、カフェオイルキナ酸類。代表はシナリン(ジカフェオイルキナ酸)とクロロゲン酸
  • フラボノイド(0.1〜2%): ルテオリンの配糖体。スコリモシド(ルテオリン-7-ルチノシド)など
  • セスキテルペンラクトン(約0.4%): 苦味成分。そのうち47〜83%がシナロピクリン
  • その他: 精油成分、フィトステロール、タンニン、糖、イヌリンなど

同報告書は、シナロピクリンは根や成熟した果実・花には含まれず、若い葉で含量が最も高いと記している。化粧品成分オンラインも、アーチチョーク葉エキスの成分としてシナリン・クロロゲン酸・カフェー酸、シナロピクリン、スコリモシドを挙げている(出典: 化粧品成分オンライン)。

ただし、これは原料植物の葉の組成であって、化粧品原料のエキスに各成分がどれだけ残るかは、抽出溶媒・濃度・製法で変わる。流通する原料の例では、BG と水で抽出・希釈した溶液として供給され、化粧品では「BG、水、アーチチョーク葉エキス」と溶媒を分けて表示する(出典: 一丸ファルコス 製品情報)。

規制上は、医薬部外品の有効成分ではない添加成分として扱う。部外品の処方に入る場合も「その他の成分」としての配合で、本成分に承認効能はない。

1.2 どんな製品に配合されるか

Cosmetic-Info.jp の化粧品表示名称ページには、「アーチチョーク葉エキス」を含む市販化粧品が2,045件登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp、閲覧時点の件数)。化粧品全体では珍しい成分ではない。

一方、DappNotes の商品マスター(132製品)で本成分が現れるのは3品で、3品とも医薬部外品、表示はすべて部外品名の「アーティチョークエキス」だった。化粧品名の「アーチチョーク葉エキス」で表示している商品は、マスター内にはない。

商品区分剤形有効成分表示表示位置/全成分数
&GINO プレミアムフェイスエッセンス アクアモイス医薬部外品美容液ナイアシンアミド・グリチルリチン酸ジカリウムアーティチョークエキス36/73
murphy 薬用オールインワンジェル医薬部外品オールインワンジェルナイアシンアミド・D-パントテニルアルコールアーティチョークエキス22/37
MENS NULL 薬用オールインワンジェル モイストタイプ医薬部外品オールインワンジェルナイアシンアミド・グリチルリチン酸ジカリウムアーティチョークエキス12/35

(出典: &GINO は公式サイト、murphy は楽天の公式取扱店、MENS NULL はハンズ公式ECの全成分表示。表示位置は有効成分を先頭に含めた通し番号)

3品とも、メンズ向けに販売されている D2C 系の薬用スキンケアで、有効成分にナイアシンアミドを含む。アーティチョークエキスは有効成分ではなく、「その他の成分」の中に数十種類の植物エキス・保湿成分と並んで入っている。

表示位置の数字から配合量の大小は読まない。医薬部外品の「その他の成分」の並びは、本クラスタの商品では量の順と読める並びになっておらず、MENS NULL で12番目、&GINO で36番目という差も、エキスの量の差を示すものではない。

同じ商品に一緒に現れる植物エキス

本クラスタで扱う5つの表示(ビルベリー葉エキス・ユキノシタエキス・アーティチョークエキス・アルピニアカツマダイ種子エキス・クワエキス)のうち、2つ以上が同じ商品に現れるのは、132製品中4品だけで、すべて医薬部外品だった。

商品区分ビルベリー葉ユキノシタアーティチョークアルピニアカツマダイ種子クワエキス
REDEN メディカルスカルプシャンプー医薬部外品24位——23位31位
&GINO プレミアムフェイスエッセンス アクアモイス医薬部外品33位38位36位22位23位
murphy 薬用オールインワンジェル医薬部外品13位—22位——
MENS NULL 薬用オールインワンジェル モイストタイプ医薬部外品23位30位12位——

(出典: 商品マスターの全成分表示を集計)

アーティチョークエキスが入る3品には、すべてビルベリー葉エキスも入っている。この組み合わせが部外品の側に偏って現れる、というところまでが表示から言えることで、同じ原料メーカーの製品やあらかじめ混ぜた原料(プレミックス)を使っているかどうかは分からない。表示位置が近いかどうかも、同一原料の根拠にはならない。

1.3 メンズ視点での見方

本成分が入っている3品は、どれもメンズ向けに売られている薬用のオールインワンジェルや美容液である。洗顔後や髭剃り後に1本で済ませたい、という使い方を想定した商品で、有効成分のナイアシンアミドやグリチルリチン酸ジカリウム・D-パントテニルアルコールに加えて、植物エキスや保湿成分が数十種類並ぶ。

こうした商品の成分表で「アーティチョークエキス」を見かけたとき、押さえておきたい点は2つある。

1つは、商品の働きの中心は有効成分と保湿の基剤にあり、アーティチョークエキスは肌を整える脇役の1つにとどまること。もう1つは、アーティチョークという名前から連想しやすい「食べる野菜」「肝臓や消化のハーブ」のイメージは、成分表示のエキスとは部位も使い方も別だということである(§2.3)。

選ぶときに本成分の有無で商品を比べる必要は、ほとんどない。例外は、キク科植物にアレルギーの自覚がある人で、その場合は表示を確認する意味がある(§3.1)。

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

化粧品表示名称での配合目的は「皮膚コンディショニング剤」で、肌を整えることが本成分の役割になる(出典: Cosmetic-Info.jp)。葉に含まれるカフェオイルキナ酸類(シナリン・クロロゲン酸)やルテオリン配糖体は、植物由来のポリフェノールとして知られる系統で、苦味成分のセスキテルペンラクトン(シナロピクリン)も含む(出典: EMA/HMPC/194013/2017)。

原料メーカーは、原料の機能性をこれらの成分に結び付けて説明している。一丸ファルコスは、自社のアーチチョーク葉エキス原料について、機能性成分シナロピクリンが NF-κB(炎症や老化にかかわる細胞内の転写因子)の活性化を抑える、という原料コンセプトを示している(出典: Cosmetic-Info.jp 原料『バイオベネフィティ』/ 一丸ファルコス 製品情報)。化粧品成分オンラインも、原料メーカーの試験資料をもとに複数の作用を紹介している(出典: 化粧品成分オンライン)。

ただし、これらは原料の機能性として報告されている内容で、試験の詳細は原料メーカーの会員向け資料にあり、本稿では原文の試験条件を確認できていない。細胞や酵素を使う試験で見られた作用が、化粧品に配合したエキスを肌に塗ったときに同じ大きさで起きるとは限らない。配合商品の効能として読み替えることもできない。

2.2 一般的な効能範囲

アーチチョーク葉エキスを配合した化粧品で表現できるのは、化粧品の効能の範囲のうち「肌を整える」「肌をすこやかに保つ」「皮膚にうるおいを与える」といった範囲にとどまる。

本成分は医薬部外品の有効成分ではない。そのため、次のような働きを本成分の効能として示すことはできない。

  • 肌荒れを防ぐ・炎症を抑える
  • メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ
  • シワを改善する
  • 抗酸化で老化を防ぐ
  • 毛穴を引き締めて目立たなくする、育毛する

原料メーカーの訴求コンセプトにこれらに近い言葉が並ぶことがあるが、それは原料を処方に採用する企業向けの説明で、配合した化粧品の効能表示の根拠にはならない。

配合例の3品は医薬部外品で、承認された効能はそれぞれの有効成分に紐づく。&GINO と MENS NULL はナイアシンアミドとグリチルリチン酸ジカリウム、murphy はナイアシンアミドと D-パントテニルアルコールが有効成分として表示されている。アーティチョークエキスは「その他の成分」で、製品の効能を担う成分ではない。

2.3 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は4つある。

1. 食べる・飲むアーティチョークと、塗るエキスを同じものと考える。 アーティチョークには2つの「口から摂る」文脈がある。1つは野菜で、日本食品標準成分表でも食品名は「アーティチョーク 花らい」、つまりつぼみである(出典: 日本食品標準成分表 八訂増補2023年)。食べるのはつぼみの総苞片の肉質部と、花托(ハート)と呼ばれる付け根の部分になる(出典: EMA/HMPC/194013/2017)。

もう1つはハーブ医薬品・サプリメントで、こちらは葉を使う。EU のハーブ医薬品モノグラフでは、乾燥した葉や葉のエキスを、長年の使用実績に基づく伝統的ハーブ医薬品として、膨満感などを伴う消化不良の症状緩和に経口で用いるとしている(出典: EMA/HMPC/194014/2017)。

化粧品のアーチチョーク葉エキスは、ハーブ医薬品と同じ葉を使う。しかし、口から数グラム単位で摂る話と、BG・水の溶液として処方に少量入ったエキスを肌に塗る話では、経路も量も違う。消化や肝臓にかかわる働きを、塗る化粧品に当てはめることはできない。つぼみを食べる野菜としての栄養(食物繊維など)も、同様に肌への効果とは関係がない。

2. 医薬部外品に入っているから効く成分だと考える。 本マスターでは本成分が医薬部外品にだけ現れるため、薬用の成分という印象を持ちやすい。しかし部外品の中での本成分は「その他の成分」で、承認効能を持つのは有効成分である(§2.2)。部外品に入っていることは、本成分の働きの大きさを示さない。

3. 原料メーカーの試験結果を、配合商品の効果と考える。 §2.1 のとおり、原料の機能性として示される作用は、原料メーカーが設定した条件での結果である。商品にどれだけ配合されているか、どの原料が使われているかは表示から分からないため、商品の効果として受け取れない。

4. 表示位置が前のほうだから多く入っていると考える。 MENS NULL では12番目、&GINO では36番目に表示されているが、本クラスタの部外品の表示は量の順と読める並びになっていない(§1.2)。表示位置から配合量の差は読めない。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

化粧品原料としてのアーチチョーク葉エキスについて、化粧品成分オンラインは皮膚刺激性・皮膚感作性をいずれも「ほとんどなし」と整理している。根拠として紹介されているのは原料メーカーの資料で、女性20名が3か月使用した試験で有害な皮膚反応の報告はなかったとされる(出典: 化粧品成分オンライン)。二次資料での紹介であり、試験の原文は本稿では確認できていない。眼刺激性はデータ不足で詳細不明とされる。

米国の Cosmetic Ingredient Review(CIR)による本成分の安全性評価は、本稿では確認できていない。

一方で、アーティチョークがキク科植物であることは押さえておきたい。キク科植物のアレルギーについて、ニュージーランドの皮膚科情報サイト DermNet は次のように整理している(出典: DermNet『Compositae allergy』/『Artichoke』)。

  • キク科の主なアレルゲンはセスキテルペンラクトンで、葉・茎・花の樹脂成分に含まれ、花粉にも含まれうる
  • 1種類に感作されると、似た構造に反応して複数のキク科植物にアレルギーを起こすことがある(交差感作)
  • アーティチョークでは、シナロピクリンが主なアレルゲンと考えられている。農業従事者や花を扱う人の手の皮膚炎、接触蕁麻疹の報告がある
  • キク科アレルギーと診断された人には、キク科植物由来の成分を含むスキンケア製品を使わないよう指導している

アーティチョークによるアレルギー性接触皮膚炎は、医学誌 Contact Dermatitis に症例報告がある(出典: Meding 1983 / Samaran ほか 2020)。いずれも植物そのものの取り扱いに関する報告で、化粧品のエキスによる報告ではない。

また EMA の評価報告書は、シナロピクリンは若い葉で含量が最も高いと記している(出典: EMA/HMPC/194013/2017)。葉を内服するハーブ医薬品のモノグラフでは、禁忌に「キク科植物への過敏症」、副作用に「アレルギー反応(頻度不明)」が挙げられている(出典: EMA/HMPC/194014/2017)。これは口から摂る製剤の話だが、原料植物の性質を知るうえで参考になる。

以上をまとめると、次のように読むのが中立的である。

  • 化粧品に配合されたエキスで刺激や感作が問題になったとする報告は、本稿で確認した範囲にはない。エキスにシナロピクリンがどれだけ残るかも、表示からは分からない
  • ただし原料植物はキク科で、植物そのものではアレルギーの報告がある。キク科アレルギー(ブタクサ・キク・ヨモギなど)の自覚がある人は、配合製品でも腕の内側などでパッチテストをしてから使うのが無難
  • 「天然の植物エキスだから安全」とも、「植物エキスだからアレルギーの元」とも言い切れない

配合製品には多数の植物エキス・香料・防腐剤なども入る。赤み・かゆみなどが出たら使用を中止し、原因を1成分に決めつけず皮膚科で相談するのが現実的である。

3.2 推奨配合量と品質の注意

アーチチョーク葉エキスに、化粧品での配合量の法的な一律上限は設けられていない。

原料の一例として、一丸ファルコスは BG と水の溶液として供給する原料の推奨配合濃度を1%としている(出典: 一丸ファルコス 製品情報)。これは原料溶液としての濃度で、エキスの固形分が1%入るという意味ではない。配合商品が実際にどの原料をどれだけ使っているかは公開されておらず、本記事では配合量の数値を推定しない。

品質面では、植物エキス一般と同じく、産地・収穫時期・抽出溶媒・濃縮の度合いで組成が変わる。同じ「アーティチョークエキス」という表示でも、シナリンやシナロピクリンの含有量は商品ごとに違いうる。

なお、Cosmetic-Info.jp では CAS 番号 84012-14-6 が「アーチチョーク葉エキス」だけでなく、芽エキスや全草のアーチチョークエキスにも同じ番号で載っており、同サイトは CAS 番号が未検証である旨を注記している(出典: Cosmetic-Info.jp)。CAS 番号で部位を見分けることはできない。

3.3 よく知られた部位と、成分表に載る部位のずれ

商品マスターでは、本成分を含む4つの植物エキスの役割がどれも「整肌(植物エキス)」と書かれている。役割語だけでは違いが見えないが、原料植物のどの部位を使っているかで並べると、名前から連想する部位と成分表に載る部位がずれている例が多い。

成分植物(科・学名)成分表に載る部位名前から連想しやすい部位・文脈
ビルベリー葉エキスツツジ科 Vaccinium myrtillus葉果実(サプリで知られるアントシアニン)
ユキノシタエキスユキノシタ科 Saxifraga sarmentosa(S. stolonifera)部外品規格の本質は全草・化粧品表示名称の定義は部位の記載なし民間薬・山菜
アーチチョーク葉エキス(本成分)キク科 Cynara scolymus葉つぼみ(野菜)。ハーブ医薬品では葉を内服
アルピニアカツマダイ種子エキスショウガ科 Alpinia katsumadai種子生薬「草豆蔻(ソウズク)」と同じ部位
マグワ根皮エキス(対照)クワ科 Morus alba根皮生薬「桑白皮」。蚕の餌で知られる葉は別名称「クワ葉エキス」

(出典: 各成分の化粧品表示名称の定義・医薬部外品原料規格。部位の整理は本クラスタで共有する整理)

アーティチョークのずれ方は、2段になっている。野菜として食べるのはつぼみで、成分表示のエキスは葉。ところがハーブ医薬品やサプリメントでは、化粧品と同じ葉が使われる(§2.3)。つまり「つぼみ(食べる)」「葉(飲む)」「葉(塗る)」の3つの文脈があり、部位が同じ組み合わせでも経路と量は違う。

この表は、どの成分がよく効くかを比べるものではない。5成分とも医薬部外品の有効成分ではなく、働きの大きさは表示から読めない。部位の違いや、部外品に入っているかどうかから、効き目の優劣を導くことはできない。成分表の名前を見たときに「どの部位の、どの文脈の話か」を切り分けるための地図として使うのが適切である。

3.4 名前の出方:アーチチョークは部位ごとに名前が分かれ、部外品名は1つ

化粧品表示名称は部位ごとに5つ

化粧品表示名称には、アーチチョーク(Cynara scolymus)に由来する名称が部位ごとに5つ登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。

化粧品表示名称INCI定義(部位)収載
アーチチョーク葉エキス(本成分)Cynara Scolymus (Artichoke) Leaf Extract葉のエキスリストNo.12(2002年)
アーチチョーク芽エキスCynara Scolymus (Artichoke) Bud Extract芽のエキスリストNo.27(2014年)
アーチチョーク花エキス(登録なし)花のエキス(記載なし)
アーチチョーク葉/根Cynara Scolymus (Artichoke) Leaf/Root Powder葉及び根リストNo.27(2014年)
アーチチョークエキスCynara Scolymus (Artichoke) Extract全草のエキスリストNo.32(2017年)

化粧品の表示は「アーチチョーク」と書き、部位を名前に含める。つぼみ由来の原料は「芽エキス」(INCI の Bud Extract)という別の名前になり、欧州の COSMILE Europe でも葉エキスと芽エキスは別の成分として載っている(出典: COSMILE Europe)。

医薬部外品の名前は「アーティチョークエキス」1つ

医薬部外品の側では、部外品添加物として「アーティチョークエキス」が登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)。規格コードは99(別紙規格)、成分コードは個別の番号ではない999999で、成分の定義を書く本質欄は空欄になっている。つまり部外品名そのものには、部位の定義が書かれていない。

手元で確認した医薬部外品原料規格2021と、JCIA『医薬部外品の成分表示名称リスト』平成20年版にも、アーティチョーク・アーチチョーク・Cynara の語では載っていなかった。ただし平成20年版は古く現行の部外品表示名を取りこぼすことがあるため、ここから「部外品では正式な名前ではない」とは言えない。

化粧品名と部外品名の対応は、原料メーカーの並記で確認できる

部外品名の定義が空欄でも、化粧品名との対応は原料の登録から確認できる。原料メーカーの一丸ファルコスは、アーティチョーク(チョウセンアザミ)の葉から得た原料について、表示名を次のように並記している(出典: 一丸ファルコス 製品情報 / Cosmetic-Info.jp 原料)。

  • 化粧品表示名称: BG、水、アーチチョーク葉エキス
  • 医薬部外品表示名称: 1,3-ブチレングリコール、精製水、アーティチョークエキス

Cosmetic-Info.jp で部外品添加物「アーティチョークエキス」に紐づく原料は、この会社の2製品だけで、どちらも葉由来だった。このため本記事では、化粧品名「アーチチョーク葉エキス」と部外品名「アーティチョークエキス」を同じ成分の2つの表示名として扱っている。

一方で、次の2点は確認できていない。

  • 配合商品3品が使っている原料: どの原料メーカーの、どの部位の原料かは公開されていない。部外品名が部位を含まない以上、表示だけから部位を確定することはできない
  • 全草の「アーチチョークエキス」との関係: 化粧品名「アーチチョークエキス」(全草)は、部外品名「アーティチョークエキス」と1文字違いだが、別の化粧品表示名称である。表記が似ていることから両者を同じと読むことはできない

クラスタの中での名前の出方

同じクラスタの5成分を「化粧品名と部外品名がそろうか、割れるか」で並べると、次のようになる。

成分化粧品表示名部外品での表示そろう/割れる本マスターでの出現
ビルベリー葉エキスビルベリー葉エキスビルベリー葉エキス同じ表記で現れる化粧品2品・部外品4品
ユキノシタエキスユキノシタエキスユキノシタエキスそろう化粧品2品・部外品2品
アーチチョーク葉エキス(本成分)アーチチョーク葉エキスアーティチョークエキス割れる(部外品名は部位を含まない)部外品3品のみ
アルピニアカツマダイ種子エキスアルピニアカツマダイ種子エキスアルピニアカツマダイ種子エキス同じ表記部外品3品のみ
マグワ根皮エキス(対照)マグワ根皮エキスクワエキス割れる(部外品名は同属植物まで基原が広い)化粧品4品・部外品2品

(出典: Cosmetic-Info.jp / 医薬部外品原料規格2021 / 商品マスターの集計)

割れ方には2種類ある。マグワ根皮エキスとクワエキスは、部外品名の定義が「マグワ又はその他同属植物の根皮」で、基原の範囲が化粧品名より広い。アーティチョークは、部外品名の定義そのものが空欄で、名前にも部位が入らない。本マスターでは、アーティチョークの3品がすべて部外品で部外品名、という形で表示が区分と一致していた。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

配合例の3品から、本成分と同じ処方に入っている成分の組み合わせを見ておく。

有効成分: 3品ともナイアシンアミドを有効成分に含み、&GINO と MENS NULL はグリチルリチン酸ジカリウム、murphy は D-パントテニルアルコール(パンテノールの部外品名)を組み合わせている。承認効能はこれらの有効成分が担い、アーティチョークエキスは脇で肌を整える役割にとどまる。

保湿の基剤: 3品とも濃グリセリン(グリセリンの部外品名)と 1,3-ブチレングリコール(BG)を含む。原料のアーチチョーク葉エキス自体も BG と水の溶液として流通するため、処方の中で BG と一緒になるのは自然な組み合わせである。

ほかの植物エキス: 3品ともビルベリー葉エキスを含み、&GINO と MENS NULL にはユキノシタエキスも入る。&GINO にはアルピニアカツマダイ種子エキスとクワエキス(マグワ根皮エキスの部外品名)も並ぶ。どれも商品マスター上の役割は「整肌(植物エキス)」で、植物エキスを数多く重ねる設計の一部として入っている。

植物エキスどうしで、配合を避けるべき組み合わせは知られていない。

4.2 注意したい組合せ

アーチチョーク葉エキスについて、化粧品処方で避けるべき成分の組み合わせは、本稿で確認した資料では報告されていない。実用上の注意は、成分どうしの相性よりも次の2点にある。

  • キク科植物由来の成分が重なる場合: キク科アレルギーの自覚がある人にとっては、アーティチョークに加えてセイヨウノコギリソウ・ヨモギ・アルニカ・カミツレ・トウキンセンカなど、キク科の植物エキスが同じ処方や重ね付けの製品に入っていないかを見る意味がある。交差感作があるため、1つの植物だけ避ければよいとは限らない(§3.1)
  • 植物エキスの多い処方での初回使用: 本成分が入る商品は数十種類の成分を含む。敏感な時期や髭剃り直後の肌で初めて使う場合は、パッチテストをしてから顔全体に使うほうが原因を切り分けやすい

5. 使い方

5.1 推奨される使用シーン

アーチチョーク葉エキスは、単独で選ぶ成分ではなく、配合された商品の使い方に従う成分である。本マスターの配合例は、洗顔後に使う薬用のオールインワンジェルと美容液だった。

オールインワンジェル: 化粧水・乳液などの役割を1本にまとめた商品で、洗顔後や髭剃り後の肌に適量をなじませて使う。本成分はその中で肌を整える補助の1つとして入っている。乾燥が強い季節や部位には、ジェルだけで足りるかを肌の状態で判断し、必要ならクリームなどを重ねる。

美容液: 化粧水のあとに使う商品で、本成分はほかの植物エキスや保湿成分と一緒に配合されている。

どちらの場合も、商品を選ぶときに見るべきなのは、アーティチョークエキスの有無よりも、有効成分の種類と、使用感や肌への合い方である。

5.2 期待できないこと・避けるべき使い方

アーチチョーク葉エキスに期待できないことは次のとおり。

  • 肌荒れ・ニキビ・しみ・シワへの効果: 本成分は有効成分ではなく、これらを本成分の働きとして期待することはできない。部外品の承認効能は有効成分に紐づく
  • 消化や肝臓にかかわるハーブとしての働き: 葉を内服するハーブ医薬品の用途は、塗る化粧品には当てはまらない
  • 野菜としての栄養: つぼみを食べたときの食物繊維などの話は、葉のエキスを塗る話とは部位も経路も違う
  • 原料メーカーの訴求どおりの効果: 原料の機能性として示される作用は、配合商品の効果を示さない

避けたいのは、「アーティチョークは体によい野菜・ハーブだから、肌にもよいはず」というイメージで商品を選ぶことと、キク科アレルギーの自覚があるのに表示を確認せずに使うことである。

6. メンズ実用視点まとめ

メンズ向けの薬用オールインワンジェルや美容液で「アーティチョークエキス」を見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。

  1. 肌を整える脇役: 有効成分ではなく、ほかの植物エキスと並んで入る整肌の補助。商品の働きの中心は有効成分と保湿の基剤にある
  2. 食べる・飲むイメージは持ち込まない: 野菜として食べるのはつぼみ、ハーブとして飲むのは葉。成分表示のエキスは葉だが、塗る化粧品に消化や肝臓の話は当てはまらない
  3. 表示名は2つ: 化粧品では「アーチチョーク葉エキス」、医薬部外品では「アーティチョークエキス」。原料メーカーが同じ葉の原料に両方の名前を並記している

本成分の有無で商品を選び分ける必要はほとんどない。例外はキク科アレルギーの自覚がある人で、その場合は表示を確認し、初めて使うときにパッチテストをする価値がある。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. アーチチョーク葉エキスはどんな成分ですか?

キク科のアーティチョーク(Cynara scolymus)の葉から得られる植物エキスで、化粧品での配合目的は肌を整える皮膚コンディショニングです(出典: Cosmetic-Info.jp)。葉にはシナリン・クロロゲン酸などのカフェオイルキナ酸類、ルテオリン配糖体、苦味成分のシナロピクリンなどが含まれます(出典: EMA/HMPC/194013/2017)。医薬部外品の有効成分ではありません。

Q2. 「アーティチョークエキス」と「アーチチョーク葉エキス」は同じ成分ですか?

化粧品と医薬部外品で表示名が分かれた、同じ成分の2つの名前として扱えます。原料メーカーの一丸ファルコスが、アーティチョークの葉から得た原料について、化粧品表示名称を「アーチチョーク葉エキス」、医薬部外品表示名称を「アーティチョークエキス」と並記しています(出典: 一丸ファルコス 製品情報)。ただし部外品名の定義欄は空欄で名前にも部位が入らないため、個々の商品がどの部位の原料を使っているかは表示だけでは確定できません。

Q3. 化粧品表示の「アーチチョークエキス」とは違うのですか?

違う表示名称です。化粧品表示名称の「アーチチョークエキス」は全草のエキスと定義され、葉のエキスの「アーチチョーク葉エキス」とは別に登録されています(出典: Cosmetic-Info.jp)。部外品名の「アーティチョークエキス」と1文字違いですが、表記が似ていることから同じものとは読めません。

Q4. アーティチョークは肝臓や消化によいと聞きます。塗っても同じ効果がありますか?

ありません。EU では、アーティチョークの葉を伝統的ハーブ医薬品として、消化不良の症状緩和に口から用いるとされています(出典: EMA/HMPC/194014/2017)。化粧品も同じ葉のエキスを使いますが、経路も量も違うため、消化や肝臓にかかわる働きを塗る化粧品に当てはめることはできません。野菜として食べるのはつぼみで、こちらも肌への効果とは関係がありません。

Q5. 医薬部外品に入っているので、効果の高い成分なのですか?

そうとは言えません。配合例の3品は医薬部外品ですが、アーティチョークエキスは「その他の成分」で、承認効能を担うのはナイアシンアミドなどの有効成分です。部外品に入っていることも、表示位置が前のほうであることも、本成分の働きの大きさを示しません。

Q6. キク科アレルギーがあります。使っても大丈夫ですか?

注意して使うのが無難です。化粧品のエキスで刺激や感作が問題になったとする報告は本稿で確認した範囲にありませんが、アーティチョークはキク科で、植物そのものではシナロピクリンなどによるアレルギー性接触皮膚炎の報告があります(出典: DermNet / Contact Dermatitis 症例報告)。キク科植物は交差感作を起こすことがあるため、腕の内側などでパッチテストをしてから使い、赤みやかゆみが出たら中止して皮膚科に相談してください。

8. まとめ

アーチチョーク葉エキスは、キク科のアーティチョーク(Cynara scolymus)の葉から得られる植物エキスで、化粧品では肌を整える目的で配合される。葉にはカフェオイルキナ酸類・ルテオリン配糖体・セスキテルペンラクトンが含まれるが、化粧品原料のエキスにどれだけ残るかは抽出条件で変わる(出典: EMA/HMPC/194013/2017 / Cosmetic-Info.jp)。

名前から連想しやすい部位とのずれは2段ある。野菜として食べるのはつぼみ、ハーブ医薬品として飲むのは葉で、成分表示のエキスは葉である。部位が同じでも、飲む文脈と塗る文脈は経路も量も別で、消化や肝臓の話を化粧品に持ち込むことはできない。

表示名は、化粧品では部位ごとに5つの名前があり、本成分は「アーチチョーク葉エキス」。医薬部外品では部位を含まない「アーティチョークエキス」1つで、定義欄は空欄だが、原料メーカーが葉の原料に両方の名前を並記している。本マスターでは部外品3品にだけ、部外品名で現れた。

有効成分ではなく、部外品に入っていることも表示位置も働きの大きさを示さない。刺激性は低いと整理される一方、原料植物はキク科なので、キク科アレルギーの自覚がある人は表示を確認して使うのが実用的な読み方になる。

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