クロラミンTは、INCI名 Chloramine T、CAS番号127-65-1の有機塩素化合物で、化粧品での配合目的は殺菌剤・防腐剤にあたる(出典: Cosmetic-Info.jp)。成分表の後半に少量で並ぶ「製品を腐らせないための部品」の1つで、主役の効果を担う成分ではない。自社の商品マスターでは2製品、医薬部外品の薬用シャンプーと化粧品のクレイ洗顔に入っていた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。この記事の中心は2点ある。1つは、クロラミンTが日本の化粧品基準で「防腐剤として使ってよい成分」のリストに載り、製品の種類ごとに上限が決まっている成分だという点。もう1つは、病院や食品工場で消毒剤として粉末や濃い液を扱う人に喘息やじんま疹の報告があるという事実を、上限内で配合された洗い流す化粧品の話と分けて読む点になる。本記事ではこの2つを一次資料に沿って中立に整理する。
1. クロラミンTの基本
1.1 何の成分か
化学名は N-クロロ-p-トルエンスルホンアミドナトリウムで、医薬品の一般名(INN)では「トシルクロラミドナトリウム(Tosylchloramide sodium)」と呼ばれる(出典: CosIng / EMEA)。p-トルエンスルホンアミドという芳香族の化合物の窒素に塩素が1つ付き、ナトリウム塩になった形にあたる。化粧品表示名称の定義は「次の化学式で表される芳香族スルホン酸アミド」で、化学式は無水物で C7H7ClNNaO2S(分子量約227.6)になる(出典: Cosmetic-Info.jp)。原料として流通するのは水を3分子含む三水和物で、医薬部外品の規格も三水和物(C7H7ClNNaO2S・3H2O:281.69)を基準に純度を定めている(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト / 医薬部外品原料規格2021)。見た目は白色の結晶性の粉末で、わずかに特異なにおいがある(出典: 医薬部外品原料規格2021)。
もともとの顔は消毒剤で、世界保健機関(WHO)の医薬品分類(ATC)では皮膚用の消毒薬(D08AX04)に入り、欧州では養殖魚の病気を防ぐ動物用医薬品としても評価された(出典: PubChem / EMEA)。化粧品に入るのはこの殺菌力を製品の防腐に使う形で、医薬品として使う経路とは別の製品・別の量の話になる。
名前の扱いは次のとおり。化粧品の表示名称は「クロラミンT」(Tは全角)で、医薬部外品の成分表示名称リスト(平成20年版)にも連番737で同じ「クロラミンT」が載る(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。部外品での簡略名は設定されておらず、部外品でも化粧品でも同じ名前で表示される(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)。また、クロラミンTはかつての表示指定成分、つまり全成分表示が義務化される前に「この成分は名前を表示しなければならない」と国が指定していた成分の1つにあたる(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)。厚生労働省の薬用化粧品の有効成分リストには名前がなく、医薬部外品の有効成分ではない。
1.2 どんな製品に配合されるか
クロラミンTは化粧品基準の「別表第3」に載る成分にあたる。日本の化粧品では、防腐剤として配合してよいのはこの別表第3に載った成分だけ、というポジティブリスト方式が取られている(出典: 化粧品基準)。別表第3は2つに分かれていて、1つは「すべての化粧品に配合の制限がある成分」(安息香酸塩類やパラベン類など)、もう1つは「化粧品の種類により配合の制限がある成分」で、クロラミンTは後者に入る。
自社の商品マスター(スキンケア54製品・ヘアケア78製品)でクロラミンTを含むのは次の2製品だった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
| 製品タイプ | 製品区分 | クロラミンTの順位 | 全成分数 | 直前・直後の成分 |
|---|---|---|---|---|
| 薬用スカルプシャンプー(P030) | 医薬部外品 | 36位 | 56 | 直前 カキタンニン/直後 炭酸水素ナトリウム・炭酸ナトリウム |
| クレイ洗顔(P134) | 化粧品 | 26位 | 36 | 直前 BG(3つ前にカキタンニン)/直後 炭酸水素Na・炭酸Na |
(出典: DappNotes 商品マスター集計。両製品とも全成分は公式サイトによる)
2製品とも洗い流す製品で、化粧品基準の上限が緩い側(洗い流すもの)に入る使い方になる。
⚠️ 順位の読み方には注意が要る。医薬部外品の成分表示は配合量の順ではなく、化粧品でも1%以下の成分は順不同で書いてよいため、36位・26位という数字から配合量は分からない。言えるのは、上限が0.30%以下の成分なので、いずれにしても少量だという点にとどまる。
2製品で並び方が似ている点も、読み方に注意が要る。どちらもカキタンニン(柿由来のタンニン)の近くにクロラミンTがあり、その直後に炭酸水素Naなどの炭酸水素塩が続く。原料データベースを見ると、クロラミンTを含む原料として登録されているのは、柿タンニンを主成分とする消臭剤原料1件だけで、その表示名称は「カキタンニン、クロラミンT、炭酸水素Na」の3つ並記になっている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料詳細)。ただし製造元の公式ページはこの原料を「柿抽出物に無機塩類等を配合し安定化させた水溶液」と説明するのみで、クロラミンTの名前は出していない(出典: リリース科学工業)。成分表で隣り合うことは同じ原料から来た根拠にはならないため、両製品がこの原料を使っているかどうかは成分表示からは確定できない。
1.3 メンズ視点での見方
自社マスターでクロラミンTを含む2製品は、頭皮用の薬用シャンプーと、皮脂を吸着するクレイ洗顔だった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。どちらも男性向けに皮脂やにおいのケアを打ち出す製品で、洗い流して使う。クロラミンTはこの中で主役ではなく、製品を開封後も腐らせずに使い切るための少量の部品にあたる。
実用上の結論は、成分表で「クロラミンT」を見つけても、多くの人にとっては避ける理由になりにくい、という点にある。気にしたほうがよいのは、仕事(医療・介護・食品工場・清掃など)で消毒剤に触れて、クロラミンTで喘息やじんま疹が出たと診断されたことがある人に限られる。そうした人は、少量でも反応しうるため全成分表示で名前を確認して避けるのが確実になる。
2. 期待される働き・効果
2.1 メカニズム
クロラミンTの働きは、塩素が持つ酸化力で説明できる。窒素に結合した塩素は、活性な塩素として切り離され、菌のタンパク質や核酸と反応して菌を傷つける。欧州医薬品庁(EMEA、当時)の報告書は、殺菌作用を「塩素が切り離され、細菌のタンパク質や核酸と反応すること」と「トシルクロラミドイオン自体が細菌・ウイルス・カビなどの有機物に不可逆的に結合すること」の2つで説明している(出典: EMEA)。同報告書は、有効塩素の含有量を28〜30%としている。
この酸化力は、品質規格の測り方にも表れている。医薬部外品原料規格の定量法は、クロラミンTの水溶液にヨウ化カリウムと塩酸を加え、遊離したヨウ素の量を測るというもので、ヨウ化物を酸化してヨウ素を出す力そのものを測っている(出典: 医薬部外品原料規格2021)。
塩素を切り離したあとに残るのは、p-トルエンスルホンアミドという化合物になる。EMEA の報告書では、これは魚の体内での主な代謝物で、クロラミンT自体と違って目立った刺激性は示さないとされる(出典: EMEA)。
もう1つの性質として、クロラミンTは空気中で少しずつ分解して塩素を放出し、酸と触れると分解して有毒なガスを出す(出典: PubChem)。これは原料の保管・取り扱い上の注意で、上限内で水系の製品に溶け込んだ状態の話ではないが、「塩素系の成分」という性格をよく表している。
同じ「腐らせない」成分でも、効き方の系統は1つではない。安息香酸Naやソルビン酸Kのような有機酸系は、酸の形で働くため、製品のpHが低いほど効きやすい。フェノキシエタノールはアルコール系、パラベン類はフェノール系のエステルにあたる。クロラミンTは酸化で働く塩素系で、これらとは作用の担い手が違う。
2.2 一般的な効能範囲
日本でクロラミンTは化粧品・医薬部外品に添加される防腐成分で、医薬部外品の有効成分ではない。したがってクロラミンTに紐づく承認効能はなく、配合製品の効能は製品全体の範囲にとどまる。薬用シャンプーの「フケ・かゆみを防ぐ」といった効能は、その製品の有効成分(P030 ではイソプロピルメチルフェノール)に対して承認されたもので、クロラミンTの働きではない。
成立する説明は「製品中の菌の増殖を抑える防腐剤として、法令の上限内で配合されている」という処方事実の側になる。反対に、「頭皮を殺菌する」「ニキビ菌を殺す」「においの元の菌を退治する」といった表現を、化粧品に入ったクロラミンTの働きとして書くことはできない。jcln の配合目的には殺菌剤も含まれるが(出典: Cosmetic-Info.jp)、化粧品の中での役割は製品を守る側で、肌や頭皮に効かせる成分として扱われているわけではない。
2.3 限界・誤解されやすい点
クロラミンTをめぐって誤解されやすい点を3つ整理する。
1点目は、水道水の「クロラミン」と同じものと思うこと。水道の消毒で話題になるクロラミン(モノクロラミン、NH2Cl)は、アンモニアに塩素が付いた別の物質で、クロラミンTとは構造も用途も違う(出典: PubChem)。名前が似ているため、水道水のクロラミンについての話(シャワー中の反応の報告など)がクロラミンTの話として紹介されることがあるが、区別して読む必要がある。
2点目は、消毒薬と同じ濃さで入っていると思うこと。消毒剤として使うクロラミンTは、一般に5%の水溶液で使われ、粉末でも供給される(出典: Blomqvist 1991)。化粧品では洗い流すもので0.30%、洗い流さないもので0.10%が上限で、濃さの桁が違う(出典: 化粧品基準)。
3点目は、上限があるから危ない成分だと思うこと。化粧品基準の別表第3は、防腐剤として使ってよい成分をすべて上限つきで並べたリストで、安息香酸Naやフェノキシエタノール、メチルパラベンも同じ表に上限つきで載っている(出典: 化粧品基準)。上限が決まっていることは、国が使い方の範囲を定めて管理しているという意味で、それ自体が危険の印ではない。一方で、クロラミンTは粘膜に使用される化粧品には配合できず、洗い流さないものの上限は洗い流すものの3分の1に抑えられている。この「種類による差」は、成分の性格を反映した管理の仕方として読むのが正確になる。
3. 安全性・注意点
3.1 既知の刺激性・アレルギー報告
まず公的評価の状況を整理する。米国の CIR(Cosmetic Ingredient Review)によるクロラミンTの安全性評価は、本記事の調査範囲では見つからなかった。Cosmetic-Info.jp の成分詳細に CIR レポートへのリンクがなく、PubChem の出典一覧にも CIR は含まれていない(出典: Cosmetic-Info.jp / PubChem)。評価が見つからないことは、「データが乏しい」ことも「危険」であることも意味しない。クロラミンTは日本とEUの双方で、防腐剤として上限つきで使用が認められている成分で、安全性の管理は各国の規制の側で行われている。
次に、報告されている反応の中身を見る。クロラミンTについての報告の大半は、化粧品の使用ではなく、消毒剤として仕事で扱う人の職業曝露によるものにあたる。医学文献で書誌を確認できた主な症例報告は次のとおり。
| 報告 | 曝露の場面 | 報告された反応 |
|---|---|---|
| Bourne ほか 1979(Br Med J) | 産業現場でのクロラミンの使用 | 喘息 |
| Blomqvist ほか 1991(スウェーデン) | 粉末を扱った労働者3例 | 気管支喘息、皮膚プリックテスト陽性、特異IgE抗体を検出 |
| Blasco ほか 1992(スペイン) | 乳業の労働者(食品工業の消毒剤、4年間の曝露) | 鼻炎と喘息、IgE介在 |
| Kujala ほか 1995(フィンランド) | 浴場の職員が職場に溶液を噴霧 | 鼻炎と喘息 |
| Kanerva ほか 1997(フィンランド) | 病院の浴室の職員が溶液で表面を消毒 | 接触じんま疹と鼻炎 |
| Roorda ほか 2019(オランダ) | 精肉店で17年間手袋なしで清掃。やけどをクロラミンT入りの水で冷やした | 全身の反応(アナフィラキシー)、特異IgE陽性 |
(出典: Bourne 1979 / Blomqvist 1991 / Blasco 1992 / Kujala 1995 / Kanerva 1997 / Roorda 2019。曝露の場面は各抄録と Roorda 2019 の文献紹介による)
共通点は3つある。1つ目は、反応の多くが IgE 抗体の関わる即時型のアレルギーとして報告されていること(出典: Blomqvist 1991 / Blasco 1992 / Roorda 2019)。2つ目は、曝露の形が粉末の吸入や、数%の消毒液の噴霧・反復接触で、化粧品の使用とは濃さも経路も違うこと。3つ目は、数年から十数年にわたって仕事で繰り返し触れた末に感作が成立していることにあたる。
原体(原料そのもの)の危険有害性としては、EU の化学品分類で「飲み込むと有害」「重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷」「吸入するとアレルギー、喘息または呼吸困難を起こすおそれ」の3つが統一分類されている(出典: PubChem)。EMEA の報告書も、原体は皮膚に腐食性で眼の粘膜に強い刺激を与えるとしている(出典: EMEA)。これらは粉末や濃い液を扱う場面の分類で、上限内で製品に溶け込んだ状態の評価ではない。同報告書では、細菌を使う変異原性試験やマウスの小核試験など一連の遺伝毒性試験がいずれも陰性だった(出典: EMEA)。
化粧品の使用に即して言えば、クロラミンTは上限つきで少量入る防腐剤で、多くの人にとって問題になりにくい。ただし、職業曝露などで既に感作が成立している人では、少量でも反応が起こりうる。消毒剤でクロラミンTに反応したと診断されたことがある人は、全成分表示で名前を確認して避けるのが確実になる。製品には洗浄成分・香料・他の防腐剤なども入るため、敏感肌の人はパッチテストで相性を確かめるのが無難にあたる。
3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク
クロラミンTの配合量は、法令の上限で決まっている。日本の化粧品基準では次のとおり(出典: 化粧品基準)。
| 化粧品の種類 | 100g中の最大配合量 |
|---|---|
| 粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの | 0.30g |
| 粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの | 0.10g |
| 粘膜に使用される化粧品 | 配合不可 |
医薬部外品では、添加物として製品の種類ごとに上限が決まっている。薬用石鹸・シャンプー・リンス等・除毛剤、育毛剤、その他の薬用化粧品・腋臭防止剤・忌避剤はいずれも0.10、染毛剤とパーマ剤は0.3で、薬用口唇類・薬用はみがき類・浴用剤は空欄になっている(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)。医薬部外品の薬用シャンプーである P030 には、この0.10の枠が当てはまる。化粧品の洗顔料である P134 は、化粧品基準の「洗い流すもの」の0.30の枠になる。
EUでは化粧品規則(Regulation (EC) No 1223/2009)の付属書IIIの5番で、製品の種類を限定せずに最大0.2%と定められている(出典: CosIng / EU化粧品規則)。付属書IIIは「一定の条件で使ってよい制限物質」の表で、防腐剤の付属書Vとは別の表にあたる。
「過剰配合時のリスク」を実態に即して言えば、上限を超える配合は法令上そもそもできない。防腐剤は、多すぎれば刺激や感作の可能性が上がり、少なすぎれば開封後に菌が増えて製品が傷むという両側のリスクを持つ。上限と、キレート剤・他の防腐剤との組み合わせで、その間の量に収める設計になる。
3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理
クロラミンTが「危険」と言われるときの根拠は、主に3つに分けられる。
論点1:喘息・アレルギーの報告。報告があるのは事実で、IgE が関わる即時型の反応として医学文献に複数の症例がある(出典: 3.1 の各報告)。ただしその大半は、消毒剤の粉末を吸い込む、数%の液を噴霧する・素手で繰り返し触れるといった職業曝露で、化粧品の使用によるものではない。一方で、既に感作が成立した人には少量でも問題になりうるので、該当する人は避けるという読み方になる。
論点2:原体の危険有害性の表示。原料の安全データでは「皮膚の薬傷」「喘息を起こすおそれ」といった強い言葉が並ぶ(出典: PubChem)。これは原料の粉末そのものを扱う場面の分類で、化粧品の中で0.30%以下に薄められた状態の評価ではない。同じ構図は多くの防腐剤・洗浄成分にも当てはまり、原料のデータと製品のデータを混ぜて読まないことが大切になる。
論点3:「塩素」という言葉のイメージ。塩素系の漂白剤やプールの塩素を連想させるため、肌に強そうな印象を持たれやすい。クロラミンTは確かに塩素の酸化力で働く成分だが、化粧品の中での量は上限で抑えられ、粘膜に使う製品には配合できないという形で管理されている(出典: 化粧品基準)。
| 観点 | 語られる根拠 | 実態の整理 |
|---|---|---|
| 喘息・じんま疹 | 消毒剤での症例報告 | 大半は粉末・数%液の職業曝露。感作歴のある人は避けるのが確実 |
| 原体の分類 | EUで呼吸器感作性・皮膚腐食性に分類 | 原料を扱う場面の分類。上限内の製品の評価ではない |
| 塩素のイメージ | 漂白剤・プールとの連想 | 酸化力で働くのは事実。洗い流すもの0.30%・洗い流さないもの0.10%・粘膜用は不可で管理 |
| 公的評価 | CIR の評価が見当たらない | 評価が無いことは危険も安全も意味しない。日本・EUは上限つきで使用を認めている |
(出典: 化粧品基準 / CosIng / EMEA / PubChem / 各症例報告)
4. 相性の良い・悪い成分
4.1 併用推奨
クロラミンTは消費者が「一緒に使う」ものではなく、処方の中で他の成分と組み合わさって働く部品にあたる。自社マスターの2製品から読める組み合わせは2つある。
1つ目は、他の防腐剤との重ね合わせ。P030 には安息香酸Na(表示名は安息香酸ナトリウム)、P134 には安息香酸Naとフェノキシエタノールが一緒に入っている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。効き方の系統が違う防腐剤を組み合わせると、1つあたりの量を抑えながら、効きにくい菌の穴を埋めやすくなる。これは防腐設計の一般的な考え方にあたる。
2つ目は、キレート剤との組み合わせ。P030 にはエデト酸二ナトリウム、P134 にはEDTA-4Naが入っている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。EDTA類は水中の金属イオンを封じる成分で、金属イオンによる品質の変化を抑え、防腐剤の働きを助ける役として使われる。
4.2 併用注意
消費者の使い方の側で気にしたい点は2つある。
1点目は、職業曝露との重なり。仕事で消毒剤としてクロラミンTに触れていて、手荒れやじんま疹、せき・鼻水が職場で出る人は、化粧品より先に職場での曝露を医師に相談するのが順序になる。感作が確認された場合は、化粧品の成分表でも名前を確認して避ける。
2点目は、傷のある肌への使用。Roorda ほか(2019)の症例は、既に感作が成立していた人がやけどの傷をクロラミンT入りの水で冷やして全身の反応を起こしたもので、傷口から多く吸収されたことが一因と考察されている(出典: Roorda 2019)。化粧品での話ではないが、傷や炎症のある肌には洗浄料を含めて使わないという一般的な注意がここでも当てはまる。
4.3 類似成分
同じ「製品を保つ」補助成分の中で、クロラミンTの位置を整理する。
| 成分 | 仕事 | 系統・働き方 | 日本の化粧品での扱い |
|---|---|---|---|
| クロラミンT(本成分) | 腐らせない | 塩素系。塩素の酸化力 | 別表第3の種類別制限(洗い流す0.30%・洗い流さない0.10%・粘膜用不可) |
| ソルビン酸K | 腐らせない | 有機酸系。酸型で働く | 別表第3(ソルビン酸及びその塩類として合計0.50%) |
| ヒドロキシアセトフェノン | 腐らせない(補助) | 防腐剤フリー処方で使われる代替系 | 規制上の区分は同記事で解説 |
| エチドロン酸4Na | 金属を封じる | キレート剤 | 防腐剤ではない |
| リン酸Na | pHを保つ | 緩衝剤 | 防腐剤ではない |
| アルギン酸Na | 形を保つ | 増粘・ゲル化 | 防腐剤ではない |
| 安息香酸Na | 腐らせない | 有機酸系 | 別表第3(安息香酸塩類として合計1.0%) |
| フェノキシエタノール | 腐らせない | アルコール系 | 別表第3(1.0%) |
(出典: 化粧品基準 / 各成分記事)
防腐剤の中で近い立ち位置にあるのは、別表第3の「化粧品の種類により配合の制限がある成分」に並ぶ殺菌系の成分になる。イソプロピルメチルフェノールやベンザルコニウム塩化物(化粧品基準では塩化ベンザルコニウム)、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノンも同じ表の側に入り、製品の種類によって上限が変わる(出典: 化粧品基準)。このうちイソプロピルメチルフェノールは、医薬部外品では有効成分としても使われる点でクロラミンTと立場が違う。P030 では有効成分がイソプロピルメチルフェノールで、クロラミンTは添加物という役割分担になっている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
5. よくある質問
Q1. クロラミンTは何のために入っていますか
製品を腐らせないための防腐剤として入っています。化粧品表示名称での配合目的は殺菌剤・防腐剤で、日本の化粧品基準で防腐剤として使ってよい成分のリスト(別表第3)に載っています(出典: Cosmetic-Info.jp / 化粧品基準)。量は少なく、肌や頭皮に効かせる主役の成分ではありません。医薬部外品の有効成分でもないため、クロラミンTに対して承認された効能はありません。
Q2. 消毒剤で喘息が起きると聞きました。シャンプーや洗顔料に入っていても大丈夫ですか
喘息やじんま疹の報告は、病院・食品工場・清掃の現場などで、粉末や数%の消毒液を仕事で繰り返し扱った人の職業曝露によるものが中心です(出典: Blomqvist 1991 / Blasco 1992 / Kanerva 1997 ほか)。化粧品では洗い流すもので0.30%以下、洗い流さないもので0.10%以下に制限され、粘膜に使う製品には配合できません(出典: 化粧品基準)。曝露の形も量も違うため、同じ話としては読めません。ただし、既にクロラミンTで感作が確認されている人は少量でも反応しうるため、成分表で名前を確認して避けるのが確実です。
Q3. 水道水のクロラミンと同じものですか
別の物質です。水道の消毒で話題になるクロラミンはモノクロラミン(NH2Cl)で、アンモニアに塩素が付いたものです。クロラミンTは芳香族スルホンアミドのナトリウム塩で、構造も用途も違います(出典: PubChem)。水道水のクロラミンについての報告を、クロラミンTの話として読まないよう注意が要ります。
Q4. 「クロラミンT」と「クロラミンT」は違う成分ですか
同じ成分です。表示名称の正式な表記は全角の「クロラミンT」で、医薬部外品でも同じ名前で表示されます(出典: Cosmetic-Info.jp / 医薬部外品の成分表示名称リスト)。サイトや資料によって半角の「T」で書かれることがあるだけで、指している物質は同じです。英語では Chloramine T、医薬品の一般名では Tosylchloramide sodium(トシルクロラミドナトリウム)と呼ばれます。
Q5. EUでは使えない成分ですか
使えます。EUの化粧品規則では付属書III(制限物質)の5番に載り、最大0.2%までの配合が認められています(出典: CosIng / EU化粧品規則)。防腐剤の一覧である付属書Vではなく、付属書IIIで管理されている点が日本との違いです。
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本記事に関する注記
- 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
- 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
- 本記事で紹介した喘息・じんま疹等の報告は、消毒剤としての職業曝露に関する症例報告であり、化粧品の使用による発生頻度を示すものではありません。職場での症状は医療機関にご相談ください。
- 日本の配合上限は厚生省『化粧品基準』別表第3、医薬部外品の配合基準は Cosmetic-Info.jp 部外品添加物データベース、EUの上限は Regulation (EC) No 1223/2009 付属書IIIによります。
- 本記事に含まれる製品数の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・スキンケア54製品/ヘアケア78製品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。
- 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。
- 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
- 編集部レビュー済み・AI下書き活用