マンダリンオレンジ果皮油は、マンダリンオレンジ(Citrus nobilis)の果皮から得られる精油として登録された化粧品成分である(出典: Cosmetic-Info.jp)。合成香料ではなく植物から取った精油で、化粧品では主に柑橘の香り付けに使われる。
柑橘の精油には「光毒性がある」「天然だから肌にやさしい」という両極端のイメージがつきまとう。本記事では、米国のCosmetic Ingredient Review(CIR)が2014年にまとめた柑橘果皮油14成分の最終報告を原文で読み、結論に付いた条件(5-メトキシソラレン=5-MOPの上限と、洗い流す製品の扱い)と、マンダリンについて分かっていることを整理する。オレンジ油・ベルガモット果実油との違いにも触れる。
1. マンダリンオレンジ果皮油の基本
1.1 何の成分か
化粧品表示名称「マンダリンオレンジ果皮油」(成分番号556286)の定義は「本品は、Citrus nobilis の果皮から得られる精油である。」で、角かっこ内に Citrus reticulata が併記されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。INCI名は Citrus Nobilis (Mandarin Orange) Peel Oil で、Citrus Reticulata (Tangerine) Peel Oil も並べて登録されている。
合成・天然の別でいえば、植物の果皮から取り出した天然の精油である。CIR報告は、マンダリンの果皮油を「熟したマンダリンオレンジの果皮を圧搾して作る」と説明している(出典: CIR Final Report 2014)。柑橘の果皮油は一般にモノテルペン炭化水素を多く含み、最も多い成分はリモネンで、油の90%を超えることも多いとされる(同)。
規制上は、有効成分ではない添加成分に分類される。厚生労働省の『いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト』に「マンダリン」の語で掲載は見当たらない。医薬部外品の添加物のデータベースでも「マンダリン」「ミカン」で該当はなかった(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物、2026年9月確認)。部外品で見かける「チンピエキス」は果皮から抽出したエキスで、精油とは別の原料である。
1.2 「マンダリン」「ミカン」の名前の整理
同じマンダリンオレンジ由来でも、部位と取り出し方ごとに別の表示名称が立っている。成分表で見分けるために並べておく。
| 表示名称 | 定義(取り出し方) | 配合目的(化粧品) |
|---|---|---|
| マンダリンオレンジ果皮油(本成分) | Citrus nobilis の果皮から得られる精油 | 香料・皮膚コンディショニング剤(未分類)・消臭剤・香味剤・エモリエント剤 |
| マンダリンオレンジ油 | マンダリンオレンジ Citrus nobilis から得られる精油(部位の指定なし) | 香料 |
| マンダリンオレンジ果皮エキス | Citrus nobilis の果皮のエキス | 香料・皮膚コンディショニング剤(未分類)・酸化防止剤 |
| マンダリンオレンジ葉油 | Citrus reticulata の葉から得られる精油 | 香料・皮膚コンディショニング剤(未分類) |
| ウンシュウミカン果皮油 | ウンシュウミカン Citrus unshiu の果皮から得られる精油 | 皮膚コンディショニング剤(未分類) |
(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称、2026年9月確認)
ポイントは2つある。1つ目は、「果皮油」と部位の指定のない「油」が別の名前になっていること。成分表の「マンダリンオレンジ油」は本成分とは別に登録された名前である。2つ目は、日本の「ミカン」(温州みかん)はウンシュウミカンという別の種として名前が立っていること。「マンダリン=ミカン」と読み替えることはできない。
食べ物との関係では、乾かした果皮が生薬「陳皮(チンピ)」として知られる。日本薬局方の陳皮は「ウンシュウミカン又は Citrus reticulata Blanco の成熟した果皮」と定義されている(出典: 日本薬局方名称データベース)。Citrus reticulata はマンダリンの学名として使われる名前で、本成分の定義にも併記されている。ただし陳皮は乾燥した果皮そのもので、果皮から取った精油とは別のものである。
1.3 どんな製品に配合されるか
Cosmetic-Info.jpに登録された市販化粧品のうち、本成分を含むものは933件あった(2026年9月確認)。DappNotesの商品マスターで確認できたのは次の2品で、どちらも化粧品である。
| 商品 | 区分 | 剤形 | 本成分の位置 | 同じ処方の精油 |
|---|---|---|---|---|
| クワトロボタニコ オイルコントロール&スキンコンディショナー S | 化粧品 | 化粧水(肌に残す) | 全44成分中20番目 | ベルガモット果実油・ローズマリー油 |
| クワトロボタニコ オイルコントロール&フェイスクレンザー | 化粧品 | 洗顔料(洗い流す) | 全30成分中24番目 | ベルガモット果実油・ローズマリー油 |
(出典: QUATTRO BOTANICO 公式サイトの全成分表示、2026年9月確認)
化粧品の全成分表示は配合量の多い順だが、1%以下の成分は順不同で書ける。言えるのは「成分表の中〜後半にあり、配合量は多くない側」というところまでである。洗顔料の公式ページは「合成香料フリー」とうたっており、香りは精油で付けていると読める(ブランドの表記)。
2品が「肌に残す化粧水」と「洗い流す洗顔料」に分かれている点は、§3で見るCIRの条件の読み方に関わる。
1.4 メンズ視点での見方
配合例は、皮脂やテカリが気になる肌向けの化粧水と洗顔料である。柑橘の香りは「さっぱり」のイメージと結びつきやすく、皮脂を抑える働きまで期待しがちになる。
しかし本成分の配合目的は香料が中心で、皮脂を減らすといった働きは登録から読めない。見るべきなのは、香りの好みと、日中に使う肌に残す製品に柑橘の精油が重なって入っていないか、の2点である。性別を問わず、選ぶ基準は同じになる。
2. 期待される働き・効果
2.1 登録された配合目的
化粧品表示名称「マンダリンオレンジ果皮油」の配合目的は、香料・皮膚コンディショニング剤(未分類)・消臭剤・香味剤・エモリエント剤の5つである(出典: Cosmetic-Info.jp)。香料以外の4つも、成分の働きを確かめた効能ではなく、配合の目的を分類した名前である。
米国のCIR報告の表では、2つのINCI名の機能は次のように書かれている(出典: CIR Final Report 2014 Table 1)。
| INCI名 | CIR報告の定義 | CIR報告の機能 |
|---|---|---|
| Citrus Nobilis (Mandarin Orange) Peel Oil | マンダリンオレンジ(Citrus nobilis)の果皮から得られる油 | 香料・皮膚コンディショニング剤(その他) |
| Citrus Reticulata (Tangerine) Peel Oil | Citrus reticulata の果皮から得られる揮発油 | 消臭剤・香味剤・香料 |
日本の表示名称は、この2つのINCI名を1つの名前に並べて登録している。5つの配合目的がどういう経緯でそろったかは、表示名称データベースの記載からは読み取れない。なおCIR報告は、2つを別々の成分として扱っていて、Citrus Reticulata (Tangerine) Peel Oil は米国で使用の報告がない成分に分類されていた。
2.2 一般的な効能範囲
マンダリンオレンジ果皮油を配合した化粧品で表現できるのは、香りによる使用感の演出と、化粧品の効能範囲のうち「肌を整える」「皮膚をすこやかに保つ」といった範囲である。
次のような表現を、本成分の効能として書くことはできない。
- 皮脂を抑える・毛穴を引き締める
- ニキビを防ぐ・殺菌する
- リラックスさせる・眠りを深くする
- 血行を促す・引き締めて痩せる
アロマテラピーの分野で柑橘の精油について語られる作用は、化粧品の効能として認められた内容ではない。
2.3 限界・誤解されやすい点
1. 「天然の精油だから肌にやさしい」という連想。天然かどうかは、刺激や感作の起こりやすさを決めない。CIRの結論に「非感作性・非刺激性に処方されていれば」という条件が付いているのは、柑橘果皮油にも刺激や感作を起こしうる成分(リモネンやシトラールなど)が含まれるためである(§3.1)。
2. 「柑橘の精油はどれも同じ」という連想。柑橘の精油は、種類や取り出し方で光毒性の成分の量が大きく違う。CIR報告は、蒸留するとフロクマリン(光毒性の原因になる成分の一群)のような揮発しない成分が除かれると説明している。マンダリンをベルガモットと同じに扱うことも、オレンジと同じに扱うこともできない(§3.2)。
3. 「マンダリン=温州みかん」という連想。§1.2のとおり、温州みかんはウンシュウミカンという別の種として名前が立っている。食べ慣れたみかんの印象を、本成分にそのまま重ねることはできない。
3. 安全性・注意点
3.1 CIRの評価と結論
CIRは、化粧品に使われる柑橘の果皮油14成分をまとめて評価し、2014年9月30日付の最終報告(Final Report)を出している(刊行版は Int J Toxicol 2019)。本成分(Citrus Nobilis (Mandarin Orange) Peel Oil)はその1つで、オレンジ油にあたるスイートオレンジ果皮油、レモン・ライム・グレープフルーツ・ビターオレンジ・ユズなどの果皮油と同じ枠で評価された。
結論は次のとおりである(報告冒頭の要約から)。
完成品が(洗い流す製品を除き)5-メトキシソラレン(5-MOP)を0.0015%(15ppm)を超えて含まず、かつ非感作性・非刺激性に処方されていれば、化粧品への使用は安全。
(出典: CIR Final Report 2014。原文 “safe for use in cosmetic products when finished products, excluding rinse-off products, do not contain more than 0.0015% (15 ppm) 5-methoxypsoralen (5-MOP), and when formulated to be non-sensitizing and non-irritating”)
評価の中心は、肌に塗ったときの刺激と感作である。柑橘は食品として日常的に口にしていて、食事からの量のほうが化粧品よりはるかに多いため、飲み込んだときの全身への影響は報告では詳しく扱わない、と明記されている。米国では、マンダリン(Citrus reticulata blanco)を含む柑橘の精油は食品への使用が一般に安全と認められたもの(GRAS)に入っている(出典: CIR Final Report 2014)。
マンダリンの果皮油について報告に載るデータは、次のとおりである。いずれも文献上 Citrus reticulata と書かれた圧搾果皮油の試験で、化粧品原料のどれにあたるかまでは特定されていない。
| 試験 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ヒト 48時間閉塞パッチ | 8%(ワセリン)・5人 | 刺激なし |
| ヒト マキシマイゼーション試験 | 8%(ワセリン)・25人 | 感作なし |
| ウサギ 24時間閉塞 | 原液 | わずかな紅斑と浮腫 |
| ヘアレスマウス・ミニブタ 開放パッチ | 濃度の記載なし | 3検体中2検体で刺激 |
| ヘアレスマウス・ミニブタ 光毒性 | 原液(マンダリン油・イタリア産マンダリン油) | 陽性反応なし |
(出典: CIR Final Report 2014 Table 11・12・13。マンダリン果皮油のデータの元として Ford ら(1992, Food Chem Toxicol)を引用)
報告はさらに、動物で皮膚刺激を繰り返したときに腫瘍の促進作用が見られた試験(オレンジ・レモン・グレープフルーツ・ライムの精油)を踏まえ、柑橘果皮油は刺激を起こさない処方にしなければならないとしている。結論の「非刺激性に処方」という条件は、この議論から来ている。
3.2 5-MOPの条件と「洗い流す製品」の扱い
柑橘の光毒性で問題になるのは、果皮油に含まれるフロクマリンで、代表が5-MOP(ベルガプテン)である。肌に付いた状態で紫外線を浴びると炎症などを起こす性質がある。
CIRの5-MOPの条件は、国際香粧品香料協会(IFRA)が柑橘の精油などについて定めた基準と同じ値で、パネルは「IFRA基準を守れば光毒性は防げる」との考えを示している。その基準は次の内容である(出典: CIR Final Report 2014)。
- 肌に塗る完成品は、5-MOPを0.0015%(15ppm)以下とする。入浴剤や石けんのような洗い流す製品は除く
- 5-MOPの量が測られていない場合は、精油ごとに決められた上限を守る
- 光毒性の成分を含む原料を組み合わせるときは、足し合わさる可能性を考えて量を減らす
つまり、配合例の2品に当てはめると、肌に残す化粧水には5-MOPの上限の条件がかかり、洗い流す洗顔料にはかからない。洗顔料でも「非感作性・非刺激性に処方」という条件は残る。
マンダリンの5-MOPの量については、CIR報告の表に IFRA の資料による「典型的な量」として、マンダリン油(圧搾)250ppm、タンジェリン油(圧搾)50ppmが載っている(出典: CIR Final Report 2014 Table 5)。これは原料の精油の中の量で、製品中の量ではない。また、IFRAが個別の上限を設けた柑橘の精油として報告が挙げるのは、ビターオレンジ・グレープフルーツ・レモン・ライムの4つで、マンダリンは入っていない。
ここから言えるのは、「マンダリンの果皮油にも5-MOPは含まれうるが、動物の光毒性試験では陽性反応が出なかった」というところまでである。ベルガモットのような強い光毒性の精油と同じに扱う根拠はないが、光毒性の心配がゼロとも言えない。本稿の確認範囲では、化粧品原料の Citrus nobilis 果皮油そのものの5-MOP含有量を示す一次資料は見つけられなかった。
EUでは、日焼け止めと日焼け(ブロンズ)用の製品について、柑橘由来成分のフロクマリン含有量を1mg/kg未満とする規則があると、同報告は紹介している。
3.3 リモネンの酸化と感作
柑橘果皮油で最も多い成分はリモネンである。欧州の科学委員会(SCCS)は、リモネンをヒトで確立した接触アレルゲンに分類していて、陽性者の数は酸化したリモネンのほうが多い区分に入っている(出典: CIR Final Report 2014 Table 7)。IFRAは、リモネンとそれを多く含む天然物は過酸化物をできるだけ低く保って使うよう定めている。
EUでは、リモネンが肌に残す製品で0.001%、洗い流す製品で0.01%を超えると成分表示に書く決まりがあると、CIR報告(2014年時点)は紹介している。欧州向けの商品で精油と並んで「リモネン」が書かれているのはこのためである。
CIRのパネルは、複数の植物成分が同じ懸念成分(リモネン・シトラールなどのモノテルペン、5-MOPなどのフロクマリン)をそれぞれ持ち込みうるため、処方全体で感作などを起こす量に達しないよう注意を求めている(出典: CIR Final Report 2014)。
3.4 食べ物として身近なことと、化粧品としての評価の厚さは別
同じ時期に解説した8成分は、どれも食べ物・生薬として身近か、精油として知られている。しかし化粧品成分としての安全性がどれだけ調べられているかは、成分ごとにバラバラである。
| 成分 | 食経験(読者が持ち込む前提) | 化粧品での安全性評価 |
|---|---|---|
| ウメ果実エキス | 梅干し・梅酒 | CIRの評価は見当たらない(2022年9月版の一覧で確認) |
| グレープフルーツ種子エキス | 果物(種子は通常食べない)・「天然の防腐剤」として有名 | CIR評価あり(柑橘由来成分の報告書)。市販品に合成殺菌剤が混入していた報告もある |
| コメヌカエキス | ぬか漬け・米ぬか | CIR評価あり(コメ由来成分の報告書) |
| サンザシエキス | サンザシ(山楂子)の実・菓子・生薬 | CIRの評価は見当たらない(2022年9月版の一覧で確認・別種セイヨウサンザシの評価は借りない) |
| チガヤ根エキス | 生薬「茅根(ボウコン)」 | CIRの評価は見当たらない(2022年9月版の一覧で確認) |
| 黒砂糖エキス | 黒砂糖・黒糖 | INCI名なし=海外の評価の枠組みに乗らない。配合目的も空欄 |
| ティーツリー葉油 | 食経験なし(飲み込むと有害とされる) | CIR最終報告(条件付きで安全)・EUの科学委員会の意見・酸化物による感作の論点=評価が最も厚い |
| マンダリンオレンジ果皮油(本成分) | 果皮の精油は食品の香料(米国でGRAS)。乾かした果皮は生薬「陳皮」の基原に含まれる | CIR最終報告2014(柑橘果皮油14成分・肌に残す製品は5-MOP 15ppm以下、非刺激・非感作の処方で安全) |
(本成分以外の行は各記事の要約。詳細と出典は各記事を参照)
本成分は、食品の香料として使われてきた歴史があり、化粧品としてもCIRの評価を受けている。ただしCIRが食経験を理由に省いたのは「飲み込んだときの全身への影響」で、肌に塗ったときの刺激・感作・光毒性は別に調べて条件を付けている。食べられることは塗っても安心という意味ではなく、評価が薄いことも危険という意味ではない。両者は別々に確かめる必要がある。
3.5 配合量と表示から読めないこと
Cosmetic-Info.jpの化粧品表示名称ページでは、本成分の規制分類欄に記載はない(出典: Cosmetic-Info.jp)。米国での使用実態は、2014年の報告で152件(肌に残す製品86件・洗い流す製品58件)、2013年の業界調査による最高使用濃度は0.00005〜0.1%(肌に残す製品で最高0.1%、洗い流す製品で最高0.03%)だった(出典: CIR Final Report 2014 Table 8)。いずれも米国の値で、日本の商品の配合量を示すものではない。
成分表示から読めないことは、次の3つである。
- 配合量: 1%以下の成分は順不同で書けるため、何番目かから量は決まらない
- 5-MOPの量: 原料の産地・取り出し方(圧搾か蒸留か)で変わり、表示には出ない
- 酸化の程度: リモネンがどれだけ酸化しているかは、原料の管理と保管で決まる
4. 相性の良い・悪い成分
4.1 併用される成分
配合例の2品では、本成分はベルガモット果実油・ローズマリー油(ローズマリー葉油)と一緒に入っていて、精油を組み合わせて香りを作る処方になっている。
化粧水(肌に残す): 水・BG・グリセリン・エタノールの骨格に、植物エキスとビタミンC誘導体が続き、その後ろに精油3種が並ぶ。
洗顔料(洗い流す): 脂肪酸と水酸化Kによる石けん系の洗浄の骨格に、植物エキス・果汁類、海シルト・サンゴ末が続き、その後ろに精油3種が並ぶ。
4.2 注意したい組合せ
- ベルガモット果実油との重なり: ベルガモットの精油は、光毒性の論点でよく名前が挙がる柑橘の精油である(詳細はベルガモット果実油の記事)。CIRが紹介するIFRA基準は、光毒性の成分を含む原料を組み合わせるときは足し合わさる可能性を考えて量を減らすよう求めている(§3.2)。配合例の化粧水は肌に残す製品で、ベルガモット果実油と本成分の両方を含む。ただし、商品が基準をどう満たしているか(フロクマリンを除いた原料を使っているか等)は表示からは分からない
- ほかの柑橘の精油・香料との重なり: リモネンなどの懸念成分は、複数の植物成分から持ち込まれうる(§3.3)。精油が何種類も入る処方では、柑橘の精油が重なっていないかを成分表で確認できる
- 日中の紫外線: 肌に残す製品で柑橘の精油が気になる場合は、日焼け止めを併用する、夜のケアに回すといった使い分けができる
4.3 類似成分
柑橘の精油と、名前の近い柑橘の成分を並べる。
| 成分 | 何から取るか | 光毒性の論点(CIR 2014 の記載) |
|---|---|---|
| マンダリンオレンジ果皮油(本成分) | マンダリンオレンジの果皮の精油 | 5-MOP典型値250ppm(圧搾・IFRA資料)。動物の光毒性試験は陽性反応なし |
| オレンジ油 | スイートオレンジの果皮の精油(圧搾) | スイートオレンジ油として、試験管内で光毒性の可能性、ヒトで1%に光毒性反応の記載あり。動物(圧搾品の原液)は陽性反応なし |
| ベルガモット果実油 | ベルガモットの精油 | 柑橘果皮油14成分には含まれない |
| ユズ果実エキス | ユズの果実のエキス | 果実のエキスで精油ではない(ユズの果皮油 Citrus Junos Peel Oil は14成分に含まれる) |
| レモンエキス | レモンの果実又は果汁のエキス | エキスで精油ではない(柑橘の果実由来成分は別の報告で評価) |
(出典: CIR Final Report 2014 / Cosmetic-Info.jp。試験に使われた精油が化粧品原料のどれにあたるかは報告でも特定されていない。各成分の詳細は各記事を参照)
香りの主成分側では、リモネン・リナロール・シトラールが、精油に含まれる香気成分として別に表示されることがある。同じ柑橘の果汁・エキスとしてはグレープフルーツ果実エキスやライム果汁もあり、精油とは取り出し方も論点も違う。
同じ時期に解説した8成分(食べ物・生薬由来の組と精油)は、§3.4の表のとおりである。
5. 使い方
5.1 推奨される使用シーン
本成分の有無で商品を選ぶ場面は、主に香りの好みである。配合例の2品では、それぞれ次の点を見ればよい。
洗顔料(洗い流す): CIRの5-MOPの条件がかからない種類の製品で、朝晩どちらでも使い方は変わらない。見るのは洗浄の骨格(石けん系かどうか)と、洗い上がりの好みである。
化粧水(肌に残す): 5-MOPの条件がかかる種類の製品である。日中に使って強い日差しに当たる場面が多いなら、日焼け止めと合わせる。柑橘の精油が気になる場合は、ほかの精油の重なりも成分表で見る。
5.2 期待できないこと・避けるべき使い方
- 皮脂やテカリを抑える働き: 配合目的は香料が中心で、皮脂に作用する働きは登録から読めない
- ニキビ・殺菌の働き: 化粧品の効能として認められた内容ではない
- 香りによる気分への作用: 香りの好みは使用感の一部だが、リラックスなどの作用を本成分の効能として期待する根拠にはならない
避けたいのは、アロマ用として売られているマンダリンの精油を、原液のまま肌に塗ることである。CIRの動物試験では原液で刺激が見られ、ヒトで刺激・感作がなかったのは8%に薄めた試験である(§3.1)。化粧品に配合された原料の話と、精油の原液を肌に使う話は別である。
6. メンズ実用視点まとめ
成分表示でマンダリンオレンジ果皮油を見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。
- 香り付けの精油: 配合目的は香料が中心。皮脂を抑える・殺菌するといった働きは登録から読めない
- CIRの条件は製品の種類で変わる: 肌に残す製品は5-MOP 15ppm以下、洗い流す製品には5-MOPの上限がかからない。どちらも刺激・感作を起こさない処方が前提
- 重なりを見る: ベルガモットなどほかの柑橘の精油が一緒に入っているか、日中に使う肌に残す製品かを、成分表と使い方で確かめる
皮脂やテカリが気になって化粧水や洗顔料を選ぶなら、洗浄と保湿の骨格が先で、マンダリンオレンジ果皮油は香りの好みで見る成分として落ち着いて読めばよい。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. マンダリンオレンジ果皮油はどんな成分ですか?
マンダリンオレンジ(Citrus nobilis)の果皮から得られる天然の精油として登録された化粧品成分です(出典: Cosmetic-Info.jp)。配合目的は香料・皮膚コンディショニング剤・消臭剤・香味剤・エモリエント剤で、主に柑橘の香り付けに使われます。有効成分ではありません。
Q2. 柑橘の精油なので、日焼けしやすくなりませんか?
成分表からはどちらとも言えません。CIRは、肌に残す製品では光毒性のある5-MOPを0.0015%(15ppm)以下にする条件で、柑橘果皮油を安全としています(出典: CIR Final Report 2014)。マンダリン油(圧搾)の5-MOPの典型値は250ppmとされる一方、動物の光毒性試験では陽性反応がありませんでした。日中に使う肌に残す製品で気になる場合は、日焼け止めを併用し、ほかの柑橘の精油が重なっていないかも確認してください。
Q3. 洗顔料に入っている場合も気にしたほうがよいですか?
CIRの5-MOPの上限は、入浴剤や石けんのような洗い流す製品を除いて定められています(出典: CIR Final Report 2014)。洗い流す製品には5-MOPの上限がかかりません。ただし、刺激や感作を起こさない処方にするという条件は、洗い流す製品にもかかります。赤み・かゆみが出たら使用を中止してください。
Q4. 「オレンジ油」や「マンダリンオレンジ油」と同じものですか?
別の名前です。オレンジ油はスイートオレンジの果皮の精油、「マンダリンオレンジ油」は部位を指定しないマンダリンオレンジの精油として、それぞれ別に登録されています(出典: Cosmetic-Info.jp)。日本の温州みかんの果皮油も「ウンシュウミカン果皮油」という別の名前です。
8. まとめ
マンダリンオレンジ果皮油は、マンダリンオレンジ(Citrus nobilis)の果皮から得られる天然の精油で、化粧品では主に柑橘の香り付けに使われる(出典: Cosmetic-Info.jp)。有効成分ではなく、皮脂を抑えるといった働きは登録から読めない。
安全性は、米国CIRが2014年に柑橘果皮油14成分をまとめて評価し、「肌に残す製品は5-MOPを15ppm以下、かつ非感作性・非刺激性に処方されていれば安全」と結論している。5-MOPの上限は洗い流す製品にはかからない。マンダリンについては、ヒトの8%の試験で刺激・感作がなく、動物の光毒性試験でも陽性反応はなかったが、原料の精油に5-MOPが含まれうることも報告の表に載っている。
食品の香料として使われてきたことは、塗ったときの安全性とは別に調べられている。成分表で本成分を見たら、製品が肌に残すものか洗い流すものか、ほかの柑橘の精油が重なっていないかを見て、香りの好みで選べばよい。