セイヨウハッカ葉エキスは、シソ科のセイヨウハッカ(ペパーミント、学名 Mentha piperita)の葉のエキスで、化粧品表示名称に登録された配合目的は香料・皮膚コンディショニング剤・閉塞剤の3つである(出典: Cosmetic-Info.jp)。有効成分ではなく、化粧品にも医薬部外品にも添加成分として入る。

本記事の軸は2つある。1つは名前で、同じ葉のエキスが医薬部外品では「セイヨウハッカエキス」と書かれる。ところが化粧品では、同じ「セイヨウハッカエキス」という文字列が現在は全草のエキスという別の成分を指している。もう1つは「ペパーミント=スースーする」という期待で、清涼感の主役とされるメントールがこのエキスにどれだけ含まれるかは公開されていない。名前の対応と、ペパーミントの有名な話のどこまでが本成分に当てはまるかを、一次資料で確認できた範囲で並べる。

1. セイヨウハッカ葉エキスの基本

1.1 何の成分か

化粧品表示名称の定義は「本品は、セイヨウハッカ Mentha piperita の葉のエキスである。」で、成分番号は557196、国際的な成分名(INCI名)は Mentha Piperita (Peppermint) Leaf Extract である。化粧品の成分表示名称リストには2002年12月発行の No.12 で収載された(出典: Cosmetic-Info.jp jcln 6161)。

製法の細部は、医薬部外品側の登録に書かれている。部外品添加物「セイヨウハッカエキス」の本質は「セイヨウハッカ Mentha × piperita L.(Labiatae)の葉から水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液にて抽出して得られるエキス」である(出典: Cosmetic-Info.jp jsqi 1151)。学名の「×」は交雑でできた種であることを示す記号で、部外品の登録ではこの表記が使われている。抽出に使う溶媒は水・アルコール・グリコール類で、精油のように水蒸気蒸留で香気成分だけを集めたものではない。

実際の原料は、抽出液をBGや水で整えた液として流通する。丸善製薬の原料一覧では「ペパーミント抽出液BG」の化粧品表示名称が「セイヨウハッカ葉エキス、BG、水」と書かれている(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)。エキスの中に何がどれだけ含まれるか(香気成分・フラボノイドなど)の組成は、公開されていない。

配合目的の登録は、香料・皮膚コンディショニング剤(未分類)・閉塞剤の3つ(出典: Cosmetic-Info.jp jcln 6161)。香料は香りづけ、皮膚コンディショニング剤は肌を整える目的、閉塞剤は肌の表面を覆う目的の分類である。3つの登録の中に「清涼剤」は含まれていない。ただし配合目的の分類は表示名称DBの記載であって、なぜその3つになったかは記載からは読み取れない。

規制上は、有効成分ではない添加成分に分類される。厚生労働省の『いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト』に「ハッカ油」は載っているが、「セイヨウハッカ」「ペパーミント」の名前は見当たらない(出典: 厚生労働省 薬食審査発第1225001号)。同リストは有効成分の規格と分量の前例を集めた文書で、載っていないことが有効成分になれない根拠にはならないが、本成分を有効成分とする前例は確認できない。同じミントの仲間でも、精油のハッカ油と葉のエキスの本成分では、制度上の扱いが違う。

1.2 名前の対応: 化粧品名・部外品名・INCI名

本成分は、化粧品と医薬部外品で表示名が違う。一次資料で確認できた対応を並べる。

体系名前番号・コード指しているもの
化粧品表示名称(現行)セイヨウハッカ葉エキス成分番号557196葉のエキス(本成分)
化粧品表示名称(旧名・削除済み)(削)セイヨウハッカエキス成分番号551637葉のエキス(定義は本成分と同文)
化粧品表示名称(現行・別成分)セイヨウハッカエキス成分番号563252全草のエキス
医薬部外品の添加物セイヨウハッカエキス規格51・成分コード106266葉の抽出エキス
INCI名Mentha Piperita (Peppermint) Leaf Extract―葉のエキス(本成分と旧名に共通)

(出典: Cosmetic-Info.jp jcln 6161・1109・11550 / jsqi 1151)

化粧品名と部外品名が同じ原料を指すと言える根拠は、製造元の並記である。丸善製薬の原料一覧は、「ペパーミント抽出液BG」の化粧品表示名称をセイヨウハッカ葉エキス・BG・水、医薬部外品の表示名称をセイヨウハッカエキスと、1つの原料に両方の名前を付けている(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)。部外品の登録の本質も「葉から…抽出して得られるエキス」で、化粧品名の定義(葉のエキス)と部位がそろう。

ややこしいのは、「セイヨウハッカエキス」という文字列の来歴である。化粧品の表示名称リストの最初の号(1999年)では、葉のエキスの表示名称が「セイヨウハッカエキス」だった。2002年発行の No.12 で部位を名前に含む「セイヨウハッカ葉エキス」が収載され、これが旧名の改正名になった。2013年発行の No.26 では、全草のエキスに「セイヨウハッカエキス」という同じ名前が付いて収載された。旧名のほうは「同名異義の表示名称との混同を避けるため」として、2016年3月31日に日本化粧品工業連合会のリストから削除され、新製品の発売などの機会に改正名へ切り替えることが推奨されている(出典: Cosmetic-Info.jp jcln 1109・11550)。

つまり化粧品の成分表で「セイヨウハッカエキス」を見た場合、それは現行の定義では全草のエキスだが、削除前の旧名のまま表示している商品なら葉のエキスということもありうる。医薬部外品の成分表の「セイヨウハッカエキス」は葉のエキスである。同じ文字列でも、化粧品か医薬部外品か、いつの表示かで指すものが変わるため、表示の文字だけで本成分と同じとは言えない。本記事は、表示が「セイヨウハッカ葉エキス」のものを本成分として扱う。

1.3 同じ植物・同じ部位でも、表示名が割れることがある

化粧品と医薬部外品で表示名が違うことは、植物エキスでは珍しくない。名前が違っても同じ原料と言える場合と、名前が同じでも別の原料を指す場合がある。本成分と同じ時期に解説した6成分を並べると、割れ方は4通りに分かれる。

成分(化粧品名)医薬部外品での名前化粧品で同じ名前が指すもの読み方
イチョウ葉エキスイチョウエキス旧名で、定義は同じ(葉)名前が違っても同じ原料
ゴレンシ葉エキススターフルーツ葉エキス化粧品には同じ名前がない名前が違っても同じ原料
マタタビ果実エキスシルバーバイン果実エキス化粧品には同じ名前がない名前が違っても同じ原料
サボンソウ葉エキスサボンソウエキス(葉)根及び葉のエキス同じ名前でも化粧品では別の原料
セイヨウハッカ葉エキス(本成分)セイヨウハッカエキス(葉)全草のエキス(旧名としては葉)同じ名前でも化粧品では別の原料
レモンエキスレモンエキス果実又は果汁のエキス定義の幅が広い別の登録

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・部外品添加物 / 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)

本成分は「同じ名前でも化粧品では別の原料」の組に入る。ただしサボンソウと違い、化粧品の「セイヨウハッカエキス」にはかつて本成分の旧名だった時期がある。旧名が削除された今も、表示の切り替えが済んでいない商品が残っている可能性があり、文字列だけで判定しにくい。

1.4 「ハッカ」「ミント」が付く紛らわしい名前

化粧品表示名称を「ハッカ」で検索すると、50件を超える名前が並ぶ(出典: Cosmetic-Info.jp)。植物の種・部位・取り出し方のどれかが違えば、別の表示名称になる。成分表で見かけやすいものを、本成分との違いで並べる。

表示名称本成分との違い登録されている配合目的
セイヨウハッカエキス同じ植物の全草のエキス(1.2参照)皮膚コンディショニング剤(未分類)
セイヨウハッカ葉葉そのもの(エキスではない)香料
セイヨウハッカ葉汁葉の汁皮膚コンディショニング剤(未分類)
セイヨウハッカ葉細胞エキス葉の細胞を培養したもののエキス酸化防止剤、皮膚保護剤
セイヨウハッカ油同じ植物の精油―
ハッカ油別の種(ハッカ Mentha arvensis の仲間)から得る精油―
ハッカエキス別の種(ハッカ Mentha haplocalix)の全草のエキス香味剤、香料
ミドリハッカ葉エキス別の種(スペアミント Mentha viridis)の葉のエキス香味剤、香料、皮膚コンディショニング剤(未分類)
ハナハッカ葉エキスハッカ属ではない別の植物(Origanum vulgare)の葉のエキス皮膚コンディショニング剤(未分類)

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称。精油2件の配合目的は本記事では扱わないため「―」)

和名の「ハッカ」だけで判断すると取り違える。「ハッカ」単独は日本のハッカ(Mentha arvensis の仲間)を指し、ペパーミントは「セイヨウハッカ」、スペアミントは「ミドリハッカ」と、別の名前が付いている。さらに「ハナハッカ」はオレガノの仲間で、ミントのハッカ属(Mentha)ですらない。成分表では、和名の頭についた語(セイヨウ・ミドリ・ハナ)と、末尾の部位・取り出し方(葉エキス・葉汁・油)の両方を読む必要がある。

とくに区別しておきたいのは、エキスと精油の違いである。本成分は葉を水やアルコールなどで抽出したエキスで、ハッカ油やセイヨウハッカ油は水蒸気蒸留などで香気成分を集めた精油である。「ミントの成分」とひとまとめにされがちだが、中身の組成も、制度上の扱い(ハッカ油は医薬部外品の有効成分リストに載っている)も違う。

1.5 どんな製品に入るか

Cosmetic-Info.jp の市販品データベースでは、2026年9月の確認時点で、化粧品名「セイヨウハッカ葉エキス」が2163件の化粧品に、部外品名「セイヨウハッカエキス」が213件の医薬部外品に紐づいている(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品・医薬部外品のどちらでも広く使われる植物エキスである。

DappNotes の商品マスター(全132商品)では、本成分は2品に「セイヨウハッカ葉エキス」の表示で入っている。

商品種別全成分の中の位置
KUNDAL ハニー&マカデミア ネイチャーシャンプーシャンプー(化粧品)83成分中40番目
SHISEIDO メン フェイス クレンザー洗顔料(化粧品)22成分中16番目

(出典: 各商品の全成分表示。KUNDAL は日本の正規取扱EC、SHISEIDO メンは資生堂公式の全成分ページ)

2品とも洗い流す製品で、成分表の中ほどから後半に置かれている。化粧品の全成分表示は配合量の多い順に書くのが原則だが、配合量1%以下の成分は順不同で並べてよい。そのため、この位置から言えるのは「配合量は多くない側」というところまでで、具体的な量や、どれだけ香りや使用感に影響しているかは読み取れない。

2品の成分表には、メントールやハッカ油の表示はない。SHISEIDO メンの洗顔料では、本成分のあとにクララ根エキス、ツバキ種子エキスと植物エキスが続き、香料も別に入っている。KUNDAL のシャンプーには、名前の似たハナハッカ葉エキス(1.4のとおりハッカ属ではない)も入っている。どちらも、本成分は複数の植物エキスの1つとして処方に組み込まれている。

商品マスターの中で、表示が「セイヨウハッカエキス」の商品は見当たらなかった。医薬部外品で本成分が使われていれば「セイヨウハッカエキス」と表示されるはずだが、今回の2品はどちらも化粧品で、その例には当たらない。

1.6 メンズ視点での見方

2品のうち1品はメンズ向けの洗顔料、もう1品は男女を問わないシャンプーである。どちらも洗い流す製品で、剤形からは「さっぱり洗いたい」場面での採用が目立つ。

読み方で押さえたいのは、「ペパーミント配合」を「スースーする=皮脂がすっきりする」と置き換えないことである。本成分の登録は香料・皮膚コンディショニング剤・閉塞剤で、皮脂を落とすのは洗浄成分の役目である。洗顔料やシャンプーを選ぶときに見るのは洗浄成分の種類と構成で、本成分の有無が選ぶ基準の中心になることはまずない。清涼感を重視するなら、成分表にメントール(l-メントール)やハッカ油があるかを見るほうが確かである(§2.2)。

2. 期待される働き・効果

2.1 登録された配合目的から読めること

化粧品表示名称に登録された配合目的は、香料・皮膚コンディショニング剤(未分類)・閉塞剤の3つである(出典: Cosmetic-Info.jp jcln 6161)。

  • 香料: 香りづけの目的。ペパーミントの葉のエキスとして、処方の香りの一部を担う
  • 皮膚コンディショニング剤(未分類): 肌を整える目的。「未分類」は、保湿・柔軟などの細かい分類に当てはめていないという意味で、特定の働きを示すものではない
  • 閉塞剤: 肌の表面を覆う目的の分類

この3つは、同じ植物でも名前が違えば一致しない。全草のエキス(セイヨウハッカエキス)は皮膚コンディショニング剤の1つだけ、葉の細胞を培養したもののエキスは酸化防止剤・皮膚保護剤と、登録の並びはばらばらである(出典: Cosmetic-Info.jp)。なぜその分類になるのかは表示名称DBの記載からは読み取れないため、本記事では登録の並びを事実として示すにとどめる。

米国CIRの2001年の報告は、葉エキスと葉を「biological additives(生物由来の添加物)」と記述し、ペパーミント水を香料・香味料、精油を香料として整理している(出典: CIR 2001 要旨)。日本の表示名称の登録とは言葉が違うが、どちらも本成分を「効能の主役」としては扱っていない。

2.2 「スースーする」は本成分に期待できるか

ペパーミントと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、あのスースーする清涼感である。この感覚の主役とされるのはメントールで、CIRの2001年の報告も、ペパーミントの精油は主にメントールとメントンからなると記述している(出典: CIR 2001 要旨)。

ただし、これは精油についての記述である。本成分は葉を水・アルコール・グリコール類で抽出したエキスで、エキスの中にメントールなど香気成分がどれだけ含まれるかは、登録の定義にも製造元の一覧にも書かれていない。精油やメントールと違い、エキスでの清涼感の強さは原料次第で、成分表示から判断することはできない。

整理すると次のようになる。

成分何か清涼感について言えること
l-メントールミントの香気成分を単一の物質として取り出したもの清涼剤として配合される代表的な成分
ハッカ油ハッカ(Mentha arvensis の仲間)の精油メントールを多く含む精油で、清涼・賦香の目的で配合される
セイヨウハッカ油セイヨウハッカの精油CIRは主成分をメントールとメントンと記述
セイヨウハッカ葉エキス(本成分)セイヨウハッカの葉の抽出エキスメントール量は非公開。清涼感は原料次第で断定できない

(出典: CIR 2001 要旨 / Cosmetic-Info.jp / DappNotes 既存記事)

商品を手に取って「スースーするか」を知りたいときは、成分表にl-メントール(メントール)やハッカ油が入っているかを見るのが確かである。本記事で取り上げた2品には、どちらも入っていない。これは2品が清涼感を狙っていないという意味ではなく、香料の中身は表示されないため、成分表からは清涼感の設計を確かめられないということである。

2.3 一般的な効能範囲

化粧品に配合された本成分について、化粧品として言える効能は、厚生労働省が示す化粧品の効能の範囲内に限られる。

化粧品として言える範囲の例は次のとおり。

  • 肌を整える
  • 肌をすこやかに保つ
  • 頭皮・毛髪をすこやかに保つ
  • 芳香を与える(香料としての働きに対応)

化粧品として言えない範囲の例は次のとおり。

  • 血行を促進する
  • 炎症を鎮める、肌荒れを治す
  • 育毛・発毛、ふけ・かゆみを防ぐ(医薬部外品の有効成分の領域)
  • 皮脂を抑える、ニキビを防ぐ

(出典: 厚生労働省『化粧品の効能の範囲』)

医薬部外品に「セイヨウハッカエキス」として入っている場合も、有効成分ではなく添加成分としての配合で、その商品の効能は有効成分によるものである。「ペパーミントエキス配合の薬用シャンプー」を見ても、効能の根拠はペパーミントではなく、有効成分の欄に書かれた別の成分である。

2.4 限界・誤解されやすい点

ペパーミントは、ハーブティー、ガム、歯みがき、アロマの精油など、口に入れる・香りを嗅ぐ文脈で広く知られている。読者が「ペパーミント」という言葉から持ち込むイメージの多くは、こうした経口・食品・精油の文脈から来ている。

化粧品の本成分に当てはめるときは、次の3点を切り分けたい。

1つ目は、経口と外用の違い。飲む・食べる場合の話は、吸収のされ方も量もまったく違い、塗る化粧品の働きの根拠にはならない。

2つ目は、精油とエキスの違い。清涼感・抗菌・虫よけなど、ペパーミントの話として語られることの多くは精油についてのもので、葉の抽出エキスに同じことが当てはまるかは別に確かめる必要がある。§2.2のとおり、エキスの香気成分の量は公開されていない。

3つ目は、登録された配合目的との違い。化粧品表示名称の登録は香料・皮膚コンディショニング剤・閉塞剤で、「清涼」「頭皮の血行」「皮脂の抑制」といった目的は登録にない。

否定したいわけではない。ペパーミントの葉のエキスとして香りと使用感の一部を担い、肌を整える植物エキスとして処方に入る意味はある。そのうえで、「ペパーミントだからスースーして頭皮に効く」という期待は、本成分ではなく、メントールやハッカ油、あるいは医薬部外品の有効成分に向けるのが正確である。

3. 安全性・注意点

3.1 公的な安全性評価の状況

本成分は、米国の化粧品成分の安全性評価機関CIR(Cosmetic Ingredient Review)で、ペパーミント由来の成分群の1つとして2回評価されている。

1回目は2001年の最終報告で、ペパーミントの精油・葉エキス・葉・葉水の4つをまとめて評価した。CIRは、安全性試験のデータの大半が精油についてのものであること、精油は構成成分が多く最も条件の厳しい代表(worst case)と考えられることから、精油のデータを群全体に当てはめている。そのうえで、構成成分のプレゴンの濃度を1%以下にするという条件付きで、4成分とも化粧品に使われている範囲で安全と結論した(出典: CIR 2001 / PMID 11766133)。

2回目は2023年に国際学術誌に掲載された改訂版の評価で、対象がペパーミント由来の成分に広がっている。結論は、精油・エキス・葉と葉由来の成分について「感作を起こさないよう処方すれば」現在の使い方と濃度で安全、というものである。一方で、花・葉・茎をまとめたエキスや水、分裂組織の培養物については、データが不足していて安全と判断できないとされた(出典: CIR 2023 / PMID 37800357)。本成分(葉エキス)は、安全と結論された側に入る。

2つの報告の要旨を読むと、本成分単体のヒト試験のデータはほとんど示されていない。評価の中心は精油で、葉エキスはそれと同じ群として扱われている。「評価で安全とされた」ことと、「葉エキスそのものの試験が十分にある」ことは別であると押さえておきたい。

3.2 プレゴンの条件と「処方全体」の考え方

2001年の報告で条件になったプレゴンは、ペパーミントの精油に含まれうる成分の1つである。CIRは、プレゴンが肝毒性を持つことが知られていること、プレゴンを含む精油やプレゴン単独をラットに経口で与えた試験で小脳に嚢胞状の病変が見られたことを挙げ、安全な濃度を1%以下とした。この濃度は収穫の時期や加工の方法で管理できる、としている(出典: CIR 2001 要旨)。これらは経口で与えた動物試験の結果で、化粧品を肌に塗った場合の話ではない。

2023年の改訂の要旨では、プレゴンの数値は示されていない代わりに、1つの製品に複数の植物原料が入る場合、それぞれが同じ気になる成分を含んでいれば積み上がる可能性があるとして、処方する側に注意を求めている。植物原料に混じりうる不純物を適正製造基準(GMP)で抑えることも求めている(出典: CIR 2023 要旨)。

読者の側から見ると、この条件は「本成分に危険な成分が入っている」という意味ではなく、製造と処方の段階で管理すべき項目が示されている、という意味である。本成分のプレゴン含有量は公開されておらず、成分表から確かめることはできない。

3.3 刺激・アレルギーについて

2001年の報告の要旨は、精油やその構成成分で、刺激や感作(アレルギー)の症例が単発的に報告されていると記述している。一方で、8%の精油をマキシミゼーション法(感作性を強めに調べる試験法)で試した結果は感作性なしで、光毒性も見られなかったとしている(出典: CIR 2001 要旨)。いずれも精油のデータで、葉エキスについての値ではない。

もう1つ、2001年の報告は、メントールがほかの成分の皮膚への浸透を高めることがあると指摘し、浸透しにくいことを前提に安全性が評価された成分と組み合わせる場合は注意するよう処方者に求めている(出典: CIR 2001 要旨)。本成分がメントールをどれだけ含むかは不明なので、この指摘をそのまま本成分に当てはめることはできないが、ペパーミント由来の成分を評価するときに押さえておく論点の1つである。

使う側としては、ミントの仲間やシソ科の植物で肌にかぶれた経験がある人は、腕の内側などで少量を試してから使うと安心である。洗顔料やシャンプーのように洗い流す製品では、肌に触れる時間が短い。目に入ったときや、ひげそり直後などで肌が荒れているときにしみる場合は、使用を控える。

3.4 配合量と、表示から読めないこと

配合量について、法的な一律上限は示されていない。原料はBG・水などで希釈した液として流通しており、成分表で「セイヨウハッカ葉エキス」と書かれていても、それは抽出液としての量で、エキスに含まれる成分の量ではない(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)。

成分表から読み取れないことをまとめておく。

  • エキスに含まれるメントールなど香気成分の量(清涼感の強さ)
  • プレゴンなどCIRが管理を求める成分の量
  • 配合量(1%以下の成分は順不同で表示できるため、中ほど〜後半の位置からは「多くない側」までしか言えない)
  • 香料の中にミント系の香気成分が含まれているか

表示から確実に分かるのは、「セイヨウハッカの葉の抽出エキスが入っている」ということまでである。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

本成分は単独で働きを担う成分ではなく、ほかの保湿成分・植物エキスと組み合わせて処方される。

  • グリセリン・BG: 保湿の土台になる成分。BGは本成分の原料液の溶媒としても使われ、原料由来で成分表に並ぶことがある
  • ツバキ種子エキスなどの植物エキス: SHISEIDO メンの洗顔料では、本成分とともに複数の植物エキスが組み込まれている
  • l-メントール・ハッカ油: 清涼感を明確に出したい処方で組み合わされる成分。本成分の香りとミント系の使用感をそろえる設計がありうるが、本記事の2品には入っていない

4.2 注意したい組み合わせ

特定の成分との配合禁忌が知られているわけではない。実用上の注意は、組み合わせによる積み上がりと期待のずれである。

  • 複数のミント系原料の重ね使い: CIRの2023年の改訂は、複数の植物原料が同じ成分を含むと処方全体で積み上がる可能性を指摘している。ペパーミントのエキス・精油・メントールが1つの製品に重なる場合、その管理は処方する側の課題になる(出典: CIR 2023 要旨)
  • 清涼成分の多い製品を肌が荒れているときに使う: メントールやハッカ油を多く含む製品は、ひげそり直後や日焼け後の肌でしみることがある。本成分が入っているかどうかより、清涼成分の有無で判断する
  • 「ペパーミント配合=頭皮ケア効果」という期待: 本成分は化粧品の添加成分で、育毛・ふけ防止などの効能は、医薬部外品の有効成分の領域になる

4.3 類似成分

ミント由来の既存記事と、名前の割れ方を共有する同時期の植物エキスを並べる。

成分本成分との関係
ハッカ油別の種(ハッカ)の精油。清涼・賦香目的で、医薬部外品の有効成分リストにも載っている。本成分は葉のエキスで、有効成分リストに載っていない
l-メントールミントの香気成分を単一の物質として取り出したもの。清涼感の主役。本成分のメントール含有量は非公開
スペアミント油別の種(ミドリハッカ)の精油。同じミントの仲間でも主成分の性格が違う
イチョウ葉エキス医薬部外品名「イチョウエキス」は化粧品の旧名で、定義も同じ。名前が違っても同じ原料と言える例
ゴレンシ葉エキス医薬部外品名「スターフルーツ葉エキス」。化粧品に同じ名前がなく、別名として対応する例
マタタビ果実エキス医薬部外品名「シルバーバイン果実エキス」。化粧品に同じ名前がない例
サボンソウ葉エキス医薬部外品名「サボンソウエキス」は葉だが、化粧品の同じ名前は根及び葉。本成分と同じく、同じ名前が化粧品では別の原料を指す例
レモンエキス化粧品でも部外品でも同じ名前だが、定義が「果実又は果汁」と幅広い別の登録

(出典: Cosmetic-Info.jp / 厚生労働省 薬食審査発第1225001号 / DappNotes 既存記事)

ミントの3記事との違いは、精油・単一成分か、葉の抽出エキスか、という取り出し方の違いに尽きる。清涼感や制度上の扱いは、取り出し方で変わる。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. セイヨウハッカ葉エキスとはどんな成分ですか?

シソ科のセイヨウハッカ(ペパーミント)の葉を、水・エタノール・グリコール類などで抽出したエキスです。化粧品表示名称に登録された配合目的は、香料・皮膚コンディショニング剤・閉塞剤の3つです。有効成分ではなく、化粧品にも医薬部外品にも添加成分として入ります。精油(ペパーミント油)や、単一の物質であるl-メントールとは別の成分です。

Q2. 「セイヨウハッカエキス」と書いてあれば同じ成分ですか?

医薬部外品の成分表なら、葉のエキスで本成分と同じ原料と考えられます。化粧品の成分表では注意が必要で、現行の化粧品表示名称の「セイヨウハッカエキス」は全草(葉だけでなく植物全体)のエキスを指す別の成分です。ただし、かつては本成分の旧名が「セイヨウハッカエキス」で、2016年にリストから削除されたため、古い表示のまま残っている商品では葉のエキスの場合もあります。化粧品で「セイヨウハッカエキス」を見ても、表示だけではどちらか決められません。

Q3. ペパーミントのエキスなので、スースーしますか?

断定できません。スースーする清涼感の主役とされるのはメントールで、CIRはペパーミントの精油の主成分をメントールとメントンと記述しています。本成分は精油ではなく葉の抽出エキスで、メントールなど香気成分をどれだけ含むかは公開されていません。清涼感の強さは原料次第です。清涼感を求めるなら、成分表にl-メントール(メントール)やハッカ油が入っているかを確認するほうが確かです。

Q4. セイヨウハッカ葉エキスは安全ですか?

米国CIRは、ペパーミント由来の成分について2001年と2023年の2回評価し、2023年の改訂では「感作を起こさないよう処方すれば」現在の使い方と濃度で安全と結論しています。2001年の報告では、精油に含まれうるプレゴンを1%以下にすることが条件でした。ただし評価のデータの中心は精油で、葉エキス単体のヒトデータは要旨の範囲ではほとんど示されていません。ミントの仲間やシソ科の植物でかぶれた経験がある人は、少量で試してから使うと安心です。

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