PEG-100水添ヒマシ油(INCI名 PEG-100 Hydrogenated Castor Oil)は、ヒマシ油に水素を添加した水添ヒマシ油に、酸化エチレン(EO)を平均100モル付けた非イオン界面活性剤。化粧品表示名称の定義は「水添ヒマシ油のポリエチレングリコールエーテルであり、酸化エチレンの平均付加モル数は100」で、配合目的は香料・洗浄剤・可溶化剤として登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。成分表の後半に少量で並ぶ、香りや油分を液に均一に混ぜるための部品で、肌や頭皮に効き目を届ける主役ではない。同じ「PEG-◯◯水添ヒマシ油」の兄弟は数字だけが違い、数字=EOの平均モル数が大きいほど水になじむ性質(親水性)が強くなる。本サイトで扱う兄弟の中ではPEG-100が最もEOが多い。本記事では、この「100」という数字がPEG-40水添ヒマシ油やPEG-60水添ヒマシ油と比べて何を変えるのかを、原料製造元4社の公表HLBと、米国CIRの2014年の安全性評価で確かめながら整理する。

1. PEG-100水添ヒマシ油の基本

1.1 何の成分か

PEG-100水添ヒマシ油は、2段階の加工を経た成分として読むと分かりやすい。出発点はトウゴマの種子から採るヒマシ油で、その主成分はリシノール酸という水酸基(-OH)を持つ脂肪酸のトリグリセリドにあたる。これに水素を添加すると二重結合が飽和し、12-ヒドロキシステアリン酸を主体とする水添ヒマシ油になる。そこへ酸化エチレンを付加重合させ、水になじむポリエチレングリコール(PEG)の鎖を伸ばしたものが本成分にあたる(出典: CIR 2014)。

CIRの報告書は、この反応生成物を1つの分子ではなく混合物として説明している。酸化エチレンは水酸基に付く(エーテル化)だけでなく、グリセリンと脂肪酸のあいだのエステル結合に割り込む形(エステル交換)でも入り、一部は脂肪酸とつながらないPEGとして残る。「平均100モル」は、水添ヒマシ油1モルに対して反応させた酸化エチレンの量の目安で、すべての分子が100個ずつEOを持つという意味ではない(出典: CIR 2014 Table 3・本文 Chemistry)。

名前の読み方は次のとおり。

  • PEG:ポリエチレングリコール=酸化エチレンが連なった鎖。水になじむ側
  • 100:酸化エチレンの平均付加モル数。配合濃度でも刺激の強さでもない
  • 水添ヒマシ油:油になじむ側の母体

化粧品表示名称は「PEG-100水添ヒマシ油」(成分番号550197)。CAS番号61788-85-0はEO数を問わず兄弟全体で共有される汎用の番号(generic)で、本成分だけを指す番号ではない(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR 2014 Table 3)。

医薬部外品での呼び名は事情が違う。日本化粧品工業連合会の『医薬部外品の成分表示名称リスト』(平成20年版)では、連番2009「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」が「硬化ヒマシ油に酸化エチレンを付加重合したもの」と定義され、EO数を区別しない総称になっている。本成分の原料4品(日本エマルジョン EMALEX HC-100、日光ケミカルズ NIKKOL HCO-100、日油 ユニオックスHC-100、青木油脂工業 ブラウノン RCW-100)は、いずれも部外品の申請成分名をこの総称(成分コード105359)で登録している(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。つまり薬用シャンプーなどの部外品の成分表では、PEG-40もPEG-60もPEG-100も同じ「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」と書かれ、数字が見えなくなる。EO約60のものだけは別に「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60」(連番2010)という名称もある。

規制上の区分は、部外品の有効成分でも医薬品の有効成分でもない添加成分(DappNotes の区分では general-additive)にあたる。

1.2 どんな製品に配合されるか

Cosmetic-Info.jp の化粧品表示名称DBは、本成分を配合する市販化粧品を224件登録している(2026年9月時点の表示)。DappNotes の商品マスターで本成分を含むのは2製品で、いずれも化粧品にあたる。

製品種類全成分中の位置同じ製品に入る主な乳化・可溶化系
MARO 3Dボリュームアップ シャンプー EXシャンプー38位/49成分PEG-60水添ヒマシ油、ラウリン酸ポリグリセリル-10
DISM オールインワンジェル モイストオールインワンジェル38位/51成分ステアリン酸グリセリル、ポリソルベート60、水添レシチン

(出典: DappNotes 商品マスター集計・各製品の全成分表示)

化粧品の全成分表示は、配合量1%以下の成分を順不同で書いてよい。38位という位置から配合量は読み取れないが、後半に並ぶ少量の部品の1つと見るのが自然にあたる。

シャンプーの側では、同じ製品にPEG-60水添ヒマシ油も入り、エタノール・メントール・香料も含まれる。EO数の違う兄弟を2つ使う処方は、全体の親水性を狙った値に合わせる際によく見られる組み方だが、この製品でどちらが何を担っているかは成分表からは分からない。オールインワンジェルの側では、ステアリン酸グリセリルのような油寄りの乳化剤と一緒に入っており、油分(スクワラン・トリエチルヘキサノイン)を水の多いジェルに分散させる系の一部として読める。

1.3 メンズ視点での見方

男性向けのシャンプーやオールインワンジェルで本成分を見かけても、読み方は「香り・油分を液に混ぜ込むための部品」で足りる。頭皮環境や皮脂量に対して何かをする成分ではないため、皮脂の多い肌・少ない肌で評価が変わる種類の成分でもない。気にするなら、次の2点にとどめるのが現実的にあたる。

  • 「PEG」「界面活性剤」という表示だけで刺激を判断しない(洗浄を担う主成分とは役割が違う。§3.3)
  • 香料やメントールの刺激を感じやすい人は、本成分ではなく、本成分が混ぜ込んでいる側(香料・清涼剤)の有無を見る

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

界面活性剤は、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)を1つの分子に持つ。PEG-100水添ヒマシ油では、平均100モルのEOが連なったPEG鎖が親水基、水添ヒマシ油由来の脂肪酸の鎖が親油基にあたる。電荷を持たないため非イオン(ノニオン)界面活性剤に分類される。

この分子が水の中で集まると、親油基を内側、親水基を外側に向けた小さな集合体(ミセル)をつくる。内側に香料や油溶性成分を少量取り込むと、本来は水に溶けない成分が、濁らずに水の中に分散する。これが「可溶化」にあたる。取り込む油の量が増え、白く濁った乳液状に分散させる場合は「乳化」と呼ばれ、同じ仕組みの延長線上にある。

本成分の化粧品表示名称DBの配合目的は「香料、洗浄剤、可溶化剤」で、乳化剤としての登録はない(出典: Cosmetic-Info.jp)。一方で原料製造元の説明には、乳化剤としての用途も書かれている(日本エマルジョン「乳化剤、増粘剤、改質剤」、青木油脂工業「乳化剤、可溶化剤」)。表示名称DBの配合目的は表示名称ごとの登録であり、原料を実際に何の目的で使うかとは別の記録にあたる。

もう1つの顔が、水系の粘度を補う働きにあたる。日光ケミカルズは NIKKOL HCO-100 を「可溶化剤、水系増粘剤」と説明し、同社の HCO-40 は「可溶化剤(アルコールの多い系)」、HCO-50・HCO-60 は「可溶化剤(アルコールの少ない系)」と書き分けている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。「水系増粘剤」の説明が付くのは同社の兄弟ではHCO-80とHCO-100だけで、EOの多いグレードに固有の説明になっている。本成分の原料は常温で固体〜ワックス状(製造元の記載)で、PEG-40の「粘性液体〜ペースト」より固い。

2.2 EO数のはしごの中での位置

本記事は、PEGの鎖長(EO付加モル数)と母体によって働きが変わる「PEG鎖長違い」の成分群の1本にあたる。母体が何もない単体PEGでは、鎖が短いと液状で保湿・溶剤、中くらいで半固形の基剤、超高分子になると増粘に向く。水添ヒマシ油にPEGを付けた系統では、EOが増えるほど親水性が上がり、少ないものは油寄りの乳化剤、多いものは香料・油溶性成分の可溶化剤になる。

成分母体EO数/分子量の目安主な役割
PEG-8単体8/約400保湿・溶剤
PEG-32単体32/約1500保湿・基剤・結合
PEG-90M単体(超高分子)90,000/約400万増粘・すべり
PEG-20水添ヒマシ油水添ヒマシ油20乳化
PEG-30水添ヒマシ油水添ヒマシ油30乳化
PEG-40水添ヒマシ油水添ヒマシ油40可溶化
PEG-50水添ヒマシ油水添ヒマシ油50可溶化
PEG-60水添ヒマシ油水添ヒマシ油60可溶化
PEG-100水添ヒマシ油(本成分)水添ヒマシ油100可溶化・高親水
PCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油PEG-40水添ヒマシ油のエステル40可溶化・皮膚コンディショニング

(出典: 各成分記事 / Cosmetic-Info.jp)

化粧品表示名称の「PEG-◯◯」の数字は平均重合度(EOのモル数)を表すが、医薬部外品の「ポリエチレングリコール400」のような数字は平均分子量を表す。同じ数字でも意味が違う点は、単体PEGの記事で詳しく扱う。水添ヒマシ油の系統では、部外品名がEO数を区別しない総称になるため、そもそも数字が表示に出ない(§1.1)。

水添ヒマシ油の系統の中で本成分がどこにいるかは、HLBで確かめられる。HLBは親水性と親油性の釣り合いを0〜20で表す目安で、Griffin(1949)の分類では8〜18が水中油型(O/W)の乳化剤、15〜18が可溶化剤の帯にあたる。原料製造元がCosmetic-Info.jp 原料DBと自社サイトに公表しているHLBを並べると次のようになる。

製造元(原料シリーズ)EO20EO40EO60EO80EO100
日光ケミカルズ(NIKKOL HCO)10.512.514.015.016.5
日本エマルジョン(EMALEX HC)9.012.014.015.015.0
日油(ユニオックスHC)10.113.315.0—16.6
青木油脂工業(ブラウノン RCW)9.713.114.815.816.5

(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB / 日本エマルジョン『EMALEX HC Series』製品一覧。— は同DBに該当原料の登録なし)

この表から読めることは3つある。

1つ目は、EOが増えるほどHLBが上がるという並びが4社とも同じであること。本成分は15.0〜16.6で、PEG-60(14.0〜15.0)より高く、Griffinの可溶化剤の帯(15〜18)に入る。

2つ目は、上がり方が緩やかになること。EO20→60ではHLBが3.5〜5.1上がるのに対し、60→100では40モル多く足しても1.0〜2.5の上昇にとどまる。日本エマルジョンの値ではEO80と100がともに15で並ぶ。親水性の目安としては、PEG-60からPEG-100への変化は、PEG-20からPEG-60への変化より小さい。

3つ目は、同じEO数でも製造元によって1〜1.6程度の幅があること。HLBは算出方法や原料ロットで変わる目安の数値で、小数点以下の差で成分の優劣を決めるものではない。

HLBとは別の物差しとして、有機概念図のIOB(無機性値÷有機性値)でも同じ傾向が出る。日本エマルジョンの登録値は、EO20で0.94、40で1.21、60で1.36、80で1.46、100で1.52と、EOが増えるほど無機性(水寄り)の比率が上がり、やはり伸び方は小さくなっていく(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB。EO100の値は化粧品表示名称DBの有機性値5140・無機性値7815とも一致)。

最後に、化粧品表示名称DBの配合目的の登録を並べておく。PEG-20・PEG-30は「香料、乳化剤」、PEG-40は「香料、乳化剤、可溶化剤」、PEG-60・PEG-80・PEG-100は「香料、洗浄剤、可溶化剤」と登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。EOが多い側で「乳化剤」が外れて「洗浄剤」が入る並びだが、なぜその分類になるのかは表示名称DBの記載からは読み取れない。この登録を「EOが増えると乳化できなくなる」と因果で読むのは誤りで、原料製造元はEO100の原料も乳化剤として案内している(§2.1)。

2.3 限界・誤解されやすい点

1点目は「数字が大きいほど高性能・上位互換」という読み方。EOが多いほど水になじむのは確かだが、可溶化は「溶かしたい油」と「処方の溶媒」との相性で決まる。日光ケミカルズがHCO-40を「アルコールの多い系」、HCO-50・60を「アルコールの少ない系」の可溶化剤と書き分けているとおり、処方の条件によって向くグレードが変わる。PEG-100はPEG-40やPEG-60の置き換えではなく、選択肢の1つにあたる。

2点目は「本サイトで最もEOが多い=系統で最大」という読み方。化粧品表示名称DBには、さらにEOの多いPEG-200水添ヒマシ油(成分番号550225)も登録されており、CIRの2014年報告書の評価対象にも含まれる(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR 2014)。本成分は上端ではなく、上のほうにあるグレードの1つにあたる。

3点目は「ヒマシ油由来=植物オイル」という読み方。原料はヒマシ油だが、水素添加と酸化エチレンの付加を経た界面活性剤で、植物油としてのうるおいやべたつきを持ち込む成分ではない。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

米国の化粧品成分の安全性評価機関CIR(Cosmetic Ingredient Review)は、2014年の『Safety Assessment of PEGylated Oils as Used in Cosmetics』(International Journal of Toxicology 33(Suppl 4))で、PEG-100水添ヒマシ油を含むPEG化油130成分について、「現行の使用実態・濃度において、非刺激性に処方される場合に化粧品成分として安全」と結論した(出典: CIR 2014)。この報告書はCIRのステータスで刊行済み(Published Report)にあたる。

評価の経緯を補足しておく。CIRは1997年に、PEG-30・-40水添ヒマシ油を名指しで「最大100%まで安全」とする報告書を出していたが、PEG-100はその対象に入っていなかった。2014年の報告書は対象を130成分に広げ、1997年の結論を置き換えた。濃度の上限はもう設けず、代わりに「非刺激性に処方される場合」という条件が付いている(出典: CIR 2014 Introduction・Discussion・Conclusion)。

報告書に、PEG-100水添ヒマシ油そのものを使った毒性試験・刺激性試験は載っていない。CIRは、PEG化油が「脂肪酸グリセリドとPEGの反応生成物の混合物」という共通の化学的性格を持つことから、PEG化ヒマシ油群のデータと、PEG類・植物由来脂肪酸の既存評価を読み替える(read-across)形で安全性を判断した。Discussionが挙げる根拠は、高用量でも全身毒性が低いこと、皮膚への複数の試験と臨床試験で刺激・感作がほとんど見られないこと、眼刺激がほとんどないこと、細菌・哺乳類細胞の試験系で遺伝毒性がないこと、などにあたる(出典: CIR 2014 Discussion)。個別データの多くはPEG-35ヒマシ油・PEG-40水添ヒマシ油・PEG-60水添ヒマシ油のものなので、本成分について言えるのは「近い成分群のデータに基づく群評価で安全とされている」までにあたる。

報告書に載る症例報告は、次の3系統にあたる。

  • 抗がん剤などの静脈注射の溶剤として使われたPEG-35ヒマシ油・PEG-60水添ヒマシ油による反応。CIRは、注射という経路は化粧品の使用で起こらないため、化粧品の安全性評価には関係しないとした
  • 日焼け止めに入っていたPEG-7水添ヒマシ油による接触皮膚炎1例(パッチテストで10%濃度に陽性)
  • PEG-100水添ヒマシ油に関する症例報告は載っていない

(出典: CIR 2014 Case Studies・Discussion)

以上から、化粧品に入る量・使い方での刺激は低い部類と整理できる(DappNotes の安全タグは low-irritation)。ただし、個人の感受性による接触皮膚炎の可能性はどの成分でもゼロではない。

3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク

本成分に「何%入れると効く」という推奨量はない。可溶化・乳化に必要な量を処方者が決める部品だからにあたる。実際の使用濃度の目安は、CIR 2014年報告書のTable 5(2012年の業界調査)にある。

使われ方最大使用濃度
全体0.02〜4%
リーブオン(洗い流さない)0.02〜3%
リンスオフ(洗い流す)1〜2%
浴用に薄めて使う製品4%
ヘア製品(染毛以外)0.2〜3%

(出典: CIR 2014 Table 5)

同じ年のFDAの届出制度(VCRP)には、本成分の使用件数の届出がなかった(NR)。使用件数が分からないまま濃度だけが業界調査で報告されている、という状態にあたる。比較のため、同じ表でPEG-60水添ヒマシ油は349件・最大0.00004〜18%で、本成分より広く、高い濃度まで使われていた(出典: CIR 2014 Table 5)。

「過剰配合」のリスクは、成分表から消費者が判断できる類のものではない。可溶化剤が少なすぎれば濁り・分離が起き、多すぎれば使用感が重くなる、という処方設計の調整の話で、完成品では処方者が釣り合いを取っている。

製造上の留意点として、PEG部分を持つ成分には、製造工程由来の酸化エチレンと1,4-ジオキサンが微量残る可能性がある。CIRはこの点に懸念を示し、化粧品に配合する前に必要な精製を続けるよう求めている(出典: CIR 2014 Discussion)。

3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理

本成分に向けられやすい不安は、兄弟のPEG系成分と共通している。要点だけ整理する。

よく言われること根拠になっている事実実態の整理
「PEGは1,4-ジオキサンを含む」酸化エチレンの付加反応で副生しうる成分自体の毒性ではなく製造・精製の品質管理の問題。CIRは精製での除去を求めている
「界面活性剤は肌のバリアを壊す」洗浄を担う陰イオン界面活性剤は皮脂やたんぱく質に強く働く本成分は電荷を持たない非イオン界面活性剤で、成分表の後半に少量入る。主洗浄剤とは役割と量が違う
「PEGは他の成分を肌に入れやすくする」CIRが一部のPEG類の透過促進作用に言及CIRの注意は処方者向けで、「経皮吸収が懸念される成分と組み合わせる処方では注意」という条件付き
「経皮毒」学術的に確立した用語ではないCIRの報告書は、PEG化油群の全身毒性を高用量でも低いと整理している。化粧品に少量入る本成分について、体にたまって害をなすという前提を置く根拠は乏しい

(出典: CIR 2014 Discussion)

どの項目も、「PEG」「界面活性剤」という名前だけで判断すると話が大きくなる。一方で「安全と評価された=誰にでも合う」とも言えない。肌に合わないと感じた経験がある人は、その製品の全成分と見比べるのが確実にあたる。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用推奨

可溶化・乳化の部品なので、「一緒に使うと効果が上がる」という意味での併用推奨はない。処方の中でよく組み合わされる相手として、次の3系統がある。

  • 油寄りの乳化剤:ステアリン酸グリセリルのようにHLBの低い乳化剤と組み合わせ、全体のHLBを狙った値に合わせる。GriffinはHLBを複数の乳化剤の重量で平均して足し合わせられるとしており、高HLBの本成分は全体を親水側へ寄せる役にあたる(出典: Griffin 1949)。DappNotes 商品マスターのオールインワンジェルがこの組み合わせを持つ
  • ほかの可溶化剤:ポリソルベート20などの非イオン界面活性剤や、EO数の違う兄弟(PEG-60水添ヒマシ油など)。溶かしたい香料・油分の種類や量に合わせて組み合わせる
  • 取り込まれる側:香料、メントール、油溶性の美容成分など。本成分はこれらを水系にとどめる側にあたる

4.2 併用注意

化粧品の処方で、本成分と組み合わせてはいけないとされる成分は知られていない。CIRが述べる注意は1点で、一部のPEG類が他の成分の皮膚透過を高めうるため、「経皮吸収が少ないことを前提に安全とされた成分」や「経皮吸収が懸念される成分」と組み合わせる処方では注意するよう、処方者向けに求めている(出典: CIR 2014 Discussion)。これは消費者が成分表から判断する類の注意ではない。

使う側の実用的な注意としては、エタノール・メントール・香料を含む製品で刺激を感じたとき、原因を本成分に求めないことにあたる。本成分はそれらを溶かし込む側で、刺激の感じ方は溶かし込まれた側の影響を受けやすい。

4.3 類似成分

  • PEG-60水添ヒマシ油:EO60の兄弟。製造元HLBは14.0〜15.0で、可溶化剤として最も広く使われるグレードの1つ(CIR 2014 Table 5 で349件)。DappNotes のシャンプー1製品では本成分と一緒に入る
  • PEG-50水添ヒマシ油:EO50。日光ケミカルズはPEG-60と同じ「アルコールの少ない系」の可溶化剤と説明
  • PEG-40水添ヒマシ油:EO40。CIRの2012年データで届出件数が最も多いPEG化油(2107件)。日光ケミカルズは「アルコールの多い系」の可溶化剤と説明
  • PEG-30水添ヒマシ油・PEG-20水添ヒマシ油:EOの少ない側で、表示名称DBの配合目的は香料・乳化剤。油寄りの乳化剤にあたる
  • PCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油:PEG-40水添ヒマシ油にピログルタミン酸とイソステアリン酸を結合させたエステルで、油性のエモリエント寄り
  • PEG-32などの単体PEG:母体を持たないPEGで、界面活性剤ではない。「PEG」の文字が共通でも、保湿・基剤としての働きは本成分と別物

5. よくある質問

Q1. PEG-100水添ヒマシ油は何のために入っていますか

香料や油溶性の成分を、水の多い液の中に濁らせず混ぜ込むため(可溶化)と、油分を水の中に分散させる乳化の補助のためにあたる。化粧品表示名称DBの配合目的は香料・洗浄剤・可溶化剤で、原料製造元は乳化剤・水系増粘剤としての用途も案内している(出典: Cosmetic-Info.jp)。肌や頭皮に効き目を届ける成分ではない。

Q2. PEG-40やPEG-60とは何が違いますか

違いは酸化エチレン(EO)の平均モル数、つまり水になじむ鎖の長さにあたる。原料製造元4社の公表HLBは、PEG-40が12.0〜13.3、PEG-60が14.0〜15.0、PEG-100が15.0〜16.6で、PEG-100が最も親水寄りになる(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB / 日本エマルジョン)。ただしEO60から100への上がり幅は小さく、HLBの差は1〜2.5程度にとどまる。外観はPEG-40が粘性液体〜ペースト、PEG-100は固体〜ワックス状で、日光ケミカルズは本成分に「水系増粘剤」の用途も挙げている。どれが優れているかではなく、処方の条件(アルコールの量、溶かしたい油の種類)で選ばれる。

Q3. 数字が大きいほど肌への刺激が強いのですか

いいえ。「100」は配合濃度でも刺激の強さでもなく、EOの平均モル数にあたる。CIRは2014年にPEG-100水添ヒマシ油を含むPEG化油130成分を「非刺激性に処方される場合に安全」と評価しており、EO数の大小で結論を分けていない(出典: CIR 2014)。

Q4. 薬用シャンプーの成分表に「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」とあるのは同じ成分ですか

同じ系統の成分だが、EO数までは分からない。医薬部外品の表示名称「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」はEO数を区別しない総称で、PEG-100水添ヒマシ油の原料4品もこの名称で部外品の申請成分名を登録している。一方、PEG-40やPEG-60の原料も同じ名称を使うため、部外品の成分表からはどのグレードかを読み取れない(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト / Cosmetic-Info.jp 原料DB)。

Q5. 1,4-ジオキサンが心配です

PEG部分を持つ成分は、製造工程で副生する1,4-ジオキサンや原料の酸化エチレンが微量残る可能性がある。これは本成分そのものの毒性ではなく、精製の品質管理の問題にあたる。CIRは化粧品に配合する前に必要な精製を続けるよう業界に求めている(出典: CIR 2014 Discussion)。消費者の側で残留量を確かめる手段はないため、品質管理の確かなメーカーの製品を選ぶことが実際的な対応にあたる。

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本記事に関する注記

  • 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
  • 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
  • 本記事で示したHLBは原料製造元の公表値(Cosmetic-Info.jp 原料DB・日本エマルジョン公式サイト)で、算出方法や製品により幅がある目安です。
  • 本記事で紹介した使用濃度・届出件数は CIR『Safety Assessment of PEGylated Oils as Used in Cosmetics』(2014)に載る2012年時点のデータで、現在の市場の配合実態を示すものではありません。
  • 本記事に含まれる製品数の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。
  • 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。
  • 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
  • 編集部レビュー済み・AI下書き活用