PEG-50水添ヒマシ油は、水素を添加したヒマシ油(水添ヒマシ油)に酸化エチレン(EO)を平均50モル付加した非イオン界面活性剤で、化粧品では香料や油溶性の成分を化粧水のような水系に濁らせずに溶け込ませる可溶化剤として使われる(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)。同じ系統にはPEG-40水添ヒマシ油とPEG-60水添ヒマシ油がよく知られており、本成分はちょうどその間に入るEO数のグレードにあたる。この記事では、「50」という数字が親水性のどのあたりを指すのかを原料メーカーの掲載値で確かめたうえで、医薬部外品の表示名ではこの数字が消えてしまうこと、「50」を含む別の成分が複数あることの2点を整理する。PEGにまつわる1,4-ジオキサンの論点は、兄弟記事と共通する要点に絞って扱う。
1. PEG-50水添ヒマシ油の基本
1.1 何の成分か
化粧品表示名称のリストでは、PEG-50水添ヒマシ油(INCI名 PEG-50 Hydrogenated Castor Oil)は「水添ヒマシ油のポリエチレングリコールエーテルであり、酸化エチレンの平均付加モル数は50である」と定義されている(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称 成分番号550293)。出発原料のヒマシ油は脂肪酸の約87%がリシノール酸で、水素を添加すると二重結合がなくなり、主に12-ヒドロキシステアリン酸のトリグリセリドになる(出典: CIR 2014)。そこへ酸化エチレンをつないで水になじむ鎖(PEG鎖)を生やしたものが本成分で、油になじむ部分と水になじむ部分を1つの分子に持つ。
ここで押さえておきたいのは、「平均50モル」は1本の鎖の長さではないという点にある。米国の化粧品成分安全性評価機関CIRの報告書は、PEG化ヒマシ油の数字を「ヒマシ油1に対して付加した酸化エチレンの当量」と説明し、実物はエーテル化物とエステル化物が混ざった複雑な混合物で、グリセリドに結合していないPEGも含まれると書いている(出典: CIR 2014)。「PEG-50」は、そうした混合物全体として平均50モル分のEOを付けた、という意味の数字として読むのが正確にあたる。
本成分の位置を決めるのはこのEO数で、EOが多いほど水になじむ性質(親水性)が強くなる。親水性の目安として使われるHLB値を原料メーカーの掲載値で並べると、本成分の原料は13.0〜14.1で、同じメーカーの系列の中でEO40とEO60の間に収まる(詳細は §2.1)。
規制上は、化粧品にも医薬部外品にも添加成分として配合される成分で、医薬部外品の有効成分ではない。部外品での表示名は「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」で、これは硬化ヒマシ油に酸化エチレンを付加重合したものをEO数を区別せずにまとめた名前にあたる(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 連番2009)。本成分の原料3品(日本エマルジョン EMALEX HC-50、日光ケミカルズ NIKKOL HCO-50、青木油脂工業 ブラウノン RCW-50)は、いずれもこの名前を部外品申請成分名として掲げている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。つまり化粧品では「50」まで表示されるのに、部外品の成分表示からはEO数が読み取れない。同じリストにはEO約60の「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60」が別に立っており、すべてのEO数がひとまとめになっているわけでもない。
1.2 どんな製品に配合されるか
PEG-50水添ヒマシ油は、香料や油性の成分を透明な水系に溶かしておきたい製品、つまり化粧水・ミスト・美容液・ローション類に向く成分にあたる。原料の案内でも、青木油脂工業は「香料・油性成分の可溶化剤」、日本エマルジョンは乳化剤・増粘剤・改質剤のほか「油溶性ビタミン等の可溶化剤」としての用途を挙げている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。
表示名称リストに登録された配合目的は「香料、洗浄剤、可溶化剤」の3つで、乳化剤は入っていない(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)。一方で原料メーカーの中には乳化剤としての用途も案内するところがあり、登録上の配合目的と実際の使われ方は必ずしも1対1ではない。
DappNotes の商品マスターで本成分を配合しているのは、2026年9月時点で1製品、ギャツビー EXパーフェクトローション(化粧品・全26成分)にとどまる。この製品では10番目にPEG-50水添ヒマシ油、その1つ前の9番目にPEG-20水添ヒマシ油が並び、3番目にエタノール、7番目に油性成分のトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、最後に香料が入る。EO数の違う水添ヒマシ油を2種併用する処方の読み方は §4.1 で扱う。なお化粧品の全成分表示は1%以下の成分を順不同で書けるため、この並び順から配合量の大小は読み取れない。
商品マスターには「イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油」と表示する化粧水(マニフィーク モイスチュアライジング ローション)もあるが、これは本成分とは別の成分で、この記事の配合商品には含めていない(詳細は §2.3)。
1.3 メンズ視点での見方
メンズの化粧水は「さっぱり・べたつかない」を打ち出すものが多く、香料やエタノールを含む透明な処方がよくある。PEG-50水添ヒマシ油は、そうした処方で香料や少量の油分を水に溶かしたままにしておく裏方で、肌に何かを与える目的で配合される成分ではない。成分表でこの名前を見つけたら、「この製品には水に溶けにくいもの(香料や油性成分)が入っていて、それを透明に保つ工夫がある」というサインとして読むのが実際的にあたる。
気にする人が多い「PEG」「界面活性剤」という言葉については、§3.3 で整理する。先に結論だけ書くと、本成分は洗顔料やシャンプーで泡立ちと洗浄を担う主洗浄剤とは役割が違い、CIRは非刺激性に処方されることを条件に安全と結論している(出典: CIR 2014)。避けたい理由があるとすれば、本成分そのものより、それとセットで入りやすいエタノールや香料の方が判断材料になりやすい。
2. 期待される働き・効果
2.1 メカニズム
可溶化は、界面活性剤が水の中で「ミセル」と呼ばれる小さな集まりをつくり、その内側に香料や油分を抱え込むことで、本来は水に溶けないものを透明なまま水に分散させる働きにあたる。油をもっと多く抱えて白く濁った状態で安定させるのが乳化で、どちらになるかは界面活性剤の親水性の強さと、溶かしたい油の量・種類で変わる。
EO数による親水性の違いは、同じメーカーの系列で並べると分かりやすい。Cosmetic-Info.jp 原料DBに掲載された水添ヒマシ油系のHLB値と用途の案内は次のとおりで、EO数が増えるほどHLBが上がり、用途の書き方も乳化剤から可溶化剤へ移っていく(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。
| EO数 | 日光ケミカルズ(NIKKOL HCO) | 日本エマルジョン(EMALEX HC) |
|---|---|---|
| 20 | HLB 10.5・親水性乳化剤 | HLB 9.0 |
| 40 | HLB 12.5・可溶化剤(アルコールの多い系) | HLB 12.0 |
| 50(本成分) | HLB 13.5・可溶化剤(アルコールの少ない系) | HLB 13.0 |
| 60 | HLB 14.0・可溶化剤(アルコールの少ない系) | HLB 14.0 |
表から読めることは3つある。1つ目は、EO50は数字の上でも性質の上でもEO40とEO60の間に入り、HLBでいえば両者の中間やや60寄りに位置すること。2つ目は、日光ケミカルズの案内が、HCO-40を「アルコールの多い系」、HCO-50とHCO-60を「アルコールの少ない系」の可溶化剤と書き分けており、本成分は用途の案内の上では60側に分類されていること。3つ目は、同じEO50でもHLBは13.0(日本エマルジョン)・13.5(日光ケミカルズ)・14.1(青木油脂工業)と原料ごとに違い、「PEG-50なら HLB いくつ」と1つの値には決まらないこと。表示名は同じでも、原料の違いまでは成分表から分からない。
形状もEO数で変わる。日光ケミカルズの案内ではHCO-40が「無色〜微黄色の粘性液体〜ペースト」、HCO-50が「白色〜微黄色のペースト〜固体」で、日本エマルジョンのHC-50は「黄色軟ワックス状」とされる(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。EOが増えるほど常温で固くなる傾向があり、本成分はペーストから固体の域に入る。
2.2 一般的な効能範囲
化粧品の中で本成分が担うのは、処方の見た目と均一さを保つことにある。香料や油溶性の成分を化粧水に入れても濁ったり分離したりしないようにする、というのが中心の役割で、肌をうるおす・整えるといった化粧品の効能を担う成分ではない。
表示名称リストの配合目的に「洗浄剤」が入っているのは、界面活性剤として汚れをなじませる性質を持つためだが、洗顔料やシャンプーで主洗浄剤として使われるのは陰イオン(アニオン)界面活性剤が中心で、本成分の主な出番は可溶化にある。表示名称リストの登録を並べると、PEG-20水添ヒマシ油は「香料、乳化剤」、PEG-40は「香料、乳化剤、可溶化剤」、PEG-50とPEG-60は「香料、洗浄剤、可溶化剤」になっている(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)。EO数が上がると乳化剤が外れて洗浄剤が入る並びだが、なぜその分類になったかは表示名称DBの記載からは読み取れないため、登録の並びとして紹介するにとどめる。
2.3 限界・誤解されやすい点
本成分で誤解されやすい点は3つある。
1つ目は、「50」という数字を同じくする別の成分との取り違えにある。表示名称リストには、本成分のほかに「イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油」(INCI PEG-50 Hydrogenated Castor Oil Isostearate)や「コハク酸PEG-50水添ヒマシ油」が別の成分として立っている(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)。イソステアリン酸体は水添ヒマシ油のイソステアリン酸エステルにEOを付加したもので、配合目的は「乳化剤、非水系増粘剤」と、本成分とはまったく違う登録になっている。成分表で「PEG-50水添ヒマシ油」の前に脂肪酸名が付いていたら、別の成分として読む必要がある。また、水添していないヒマシ油にEOを付加した PEG-50 Castor Oil も、INCIでは別に立っている(出典: CIR 2014)。
2つ目は、数字が大きいほど強い・上等という読み方にある。EO数は親水性の目安であって、配合量や刺激の強さ、品質の高さを示す数字ではない。PEG-40とPEG-60のどちらを選ぶか、その間の50を選ぶかは、溶かしたい油の種類や量、処方に含まれるアルコールの量に合わせた選択で、上下関係ではない(§2.1 の表のとおり)。
3つ目は、「ヒマシ油」という名前から植物油のようなうるおいを期待することにある。本成分は水添とEO付加を経た水になじむ界面活性剤で、ヒマシ油のような油として肌に残ることを期待する成分ではない。油を溶かし込む側の成分であって、油分を補う成分ではない。
3. 安全性・注意点
3.1 既知の刺激性・アレルギー報告
本成分の安全性評価は、CIRが2014年に刊行した『Safety Assessment of PEGylated Oils as Used in Cosmetics』にまとまっている(出典: CIR 2014 / Burnett et al., Int J Toxicol 2014)。この報告書は、PEG化ヒマシ油・PEG化水添ヒマシ油・各種植物油のPEGエステルなど130成分をまとめて評価し、「現在の使用実態と濃度において、非刺激性に処方される場合(when formulated to be nonirritating)に化粧品成分として安全」と結論した。PEG-50水添ヒマシ油はこの130成分の結論リストに名前が載っている。
ただし、本成分そのものを使った試験データが報告書に並んでいるわけではない。CIRは、PEG化油が脂肪酸グリセリドとEOからなる混合物だという化学的な共通性をもとに、PEG化ヒマシ油群・PEG・植物由来の脂肪酸について既にあるデータで安全性を裏づける「読み替え(read-across)」の方法をとったと説明している(出典: CIR 2014)。根拠として挙げられているのは、急性・反復投与での全身毒性の低さ、複数の皮膚試験で刺激や感作がほとんど見られないこと、眼刺激が少ないこと、遺伝毒性がないことなどで、同じ群のPEG-60水添ヒマシ油では復帰突然変異試験・染色体異常試験・マウス小核試験のいずれでも遺伝毒性は認められていない。
個別の感受性は成分を問わずありうるため、使って赤みやかゆみが出た場合は使用を中止する、という一般的な注意は本成分にも当てはまる。
3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク
本成分に一律の目安濃度は公表されておらず、溶かし込む香料や油分の量に合わせて処方者が決める。CIR 2014 の使用頻度・濃度の表(2012年時点の米国の届出データと業界調査)にも、本成分の個別の行は見当たらなかった。
濃度の上限について押さえておきたいのは、旧報告からの変化にある。1997年のCIRの結論は「PEG-30/-40水添ヒマシ油は100%まで安全」と濃度を書いていたが、2014年の報告書はこれを置き換え、PEG化ヒマシ油を含む各成分が洗い流さない製品で50%未満の濃度で使われている実態を踏まえて、濃度の上限をもう明記する必要はないと判断した(出典: CIR 2014)。その代わりに付いた条件が「非刺激性に処方すること」で、安全かどうかを濃度の数字ではなく処方の仕上がりで担保する書き方になっている。
処方上の過不足は、成分同士の禁忌というより設計のバランスの問題にあたる。溶かしたい油に対して可溶化剤が足りなければ濁りや分離が出て、多すぎれば使用感が重くなる。これは処方者が調整する領域で、成分表から消費者が判断できる種類の話ではない。
3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理
PEG系の成分には「経皮毒」「1,4-ジオキサンが残っていて危険」といった言説がつきまとう。PEG系全体に共通する論点なので、ここでは本成分にかかわる要点に絞る。
1つ目は不純物の論点で、CIRはPEG構造を持つ成分全般について、製造工程に由来するエチレンオキシドと微量の1,4-ジオキサンが残る可能性に懸念を示し、化粧品に配合する前の精製を続けるべきだと指摘している(出典: CIR 2014)。これは分子そのものの毒性の話ではなく、原料をどこまで精製するかという製造品質の話にあたる。一方で、懸念が評価機関の報告書に明記されている以上、「まったく気にしなくてよい話」と片づけるのも正確ではない。消費者が成分表から精製度を読むことはできないため、実際にできるのは管理体制の確かなメーカーの製品を選ぶことにとどまる。
2つ目は皮膚透過の論点で、CIRは一部のPEG化油が他の成分の皮膚透過を高めうることに触れ、経皮吸収が少ないことを前提に安全とされた成分と組み合わせる処方では注意するよう求めている(出典: CIR 2014)。これは本成分が単独で体内にたまるという話ではなく、処方設計者に向けた留意点にあたる。「経皮毒」という言葉そのものは学術的に確立した概念ではない。
3つ目は医薬品での使われ方で、PEG化ヒマシ油は注射薬の溶剤にも使われ、本成分にも注射剤用の可溶化剤としての原料グレードがある(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。PEG-35ヒマシ油を溶剤にした静脈注射薬では副反応の報告があるが、CIRはこれを化粧品では起こらない投与経路のデータとして、化粧品の安全性評価には関係しないと判断している(出典: CIR 2014)。同じ成分名でも、血管に直接入れる場合と肌に塗る場合を同じ物差しで比べることはできない。
4. 相性の良い・悪い成分
4.1 併用推奨
PEG-50水添ヒマシ油と一緒に使われやすいのは、溶かされる側の成分(香料・油性成分)と、溶かす環境をつくる側の成分(エタノール・グリセリンなどの水系の溶剤)にあたる。配合商品のギャツビー EXパーフェクトローションでも、エタノール・トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル・香料が同じ処方に並んでいる。
同じ製品にPEG-20水添ヒマシ油も入っている点は、EO数違いの併用の例として読める。一般論として、乳化や可溶化の設計では、親水性の強さ(HLB)が違う界面活性剤を組み合わせて、溶かしたい油に合う親水性に全体を調整する手法がよく使われる。§2.1 の表でいえば、EO20は親水性乳化剤、EO50は可溶化剤と案内される原料で、親水性の違う2本を組み合わせる形になる。ただし、この製品で2種がそれぞれ何を担っているのか、どちらをどれだけ入れているのかは、成分表示からは判定できない。「併用はよくある設計の型に当てはまる」ところまでが成分表から言えることにあたる。
可溶化剤の組み合わせ先としては、同じ非イオン界面活性剤のポリソルベート20なども候補になり、溶かす対象やアルコール量に合わせて選ばれる。
4.2 併用注意
本成分について、避けるべき組み合わせとして広く知られた禁忌は見当たらない。
処方上の留意点として一次資料に書かれているのは、§3.3 で触れた皮膚透過の論点で、一部のPEG化油が他の成分の皮膚透過を高めうるため、経皮吸収の少なさを安全性の前提にしている成分と組み合わせる時は注意が要る、というCIRの指摘にあたる(出典: CIR 2014)。これは処方者に向けた設計上の注意で、消費者が成分表の組み合わせから危険を判定するための基準ではない。
使う側から見た注意点としては、本成分よりも、同じ処方に入りやすいエタノールや香料の方が肌との相性を左右しやすい。アルコールや香料で刺激を感じやすい人は、PEG-50水添ヒマシ油の有無ではなく、それらの有無で製品を選び分ける方が実際的にあたる。
4.3 類似成分
「PEG-◯◯」と名の付く成分は、EO数(または分子量)と、PEG鎖をどこに付けたか(母体)の2つで働きが変わる。PEGが単体の場合は鎖が長くなるほど液状から固形・増粘へ移り、水添ヒマシ油に付けた場合はEO数が増えるほど親水性が上がって、油寄りの乳化剤から香料・油溶性成分の可溶化剤へ移っていく。水添ヒマシ油系の兄弟を中心に並べると次のようになる。
| 成分 | 母体 | EO 数/分子量の目安 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| PEG-8 | 単体 | 8/約400 | 保湿・溶剤 |
| PEG-20 | 単体 | 20/約1000 | 保湿・基剤 |
| PEG-20水添ヒマシ油 | 水添ヒマシ油 | 20 | 乳化 |
| PEG-30水添ヒマシ油 | 水添ヒマシ油 | 30 | 乳化 |
| PEG-40水添ヒマシ油 | 水添ヒマシ油 | 40 | 可溶化 |
| PEG-50水添ヒマシ油(本成分) | 水添ヒマシ油 | 50 | 可溶化 |
| PEG-60水添ヒマシ油 | 水添ヒマシ油 | 60 | 可溶化 |
| PEG-100水添ヒマシ油 | 水添ヒマシ油 | 100 | 可溶化・高親水 |
| PCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油 | PEG-40水添ヒマシ油のエステル | 40 | 可溶化・皮膚コンディショニング |
(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・原料DB / CIR 2014 / 各成分記事)
表で注意したいのは、同じ「20」でも母体が違えば別物だという点にある。単体のPEG-20はEOが20個つながったポリエチレングリコールそのもので、保湿や基剤に使われる。一方のPEG-20水添ヒマシ油は水添ヒマシ油にEOを付けた乳化剤で、数字が同じでも働きは重ならない。また単体PEGの化粧品表示名の数字は重合度、医薬部外品表示名の数字は平均分子量を指す(PEG-8=ポリエチレングリコール400)のに対し、水添ヒマシ油系は部外品表示名で数字そのものが消える(§1.1)。数字の意味が表示の制度ごとに違うことは、PEG系の成分表を読む時の前提になる。
水添ヒマシ油系の中での本成分は、「PEG-40ほどアルコールの多い系向けではなく、PEG-60とほぼ同じ用途の案内を受けつつ、HLBはわずかに低い」グレードにあたる。PEG-40とPEG-60のどちらでもなく50が選ばれる理由は、個々の処方の事情によるもので、成分表からは分からない。
5. よくある質問
Q1. PEG-50水添ヒマシ油とはどんな成分ですか
水添ヒマシ油に酸化エチレンを平均50モル付加した非イオン界面活性剤で、化粧品では香料や油溶性の成分を化粧水などの水系に透明に溶け込ませる可溶化剤として使われます(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)。INCI名は PEG-50 Hydrogenated Castor Oil です。処方の見た目と均一さを保つ裏方で、肌をうるおす・整えるといった効能を担う成分ではありません。
Q2. PEG-40水添ヒマシ油やPEG-60水添ヒマシ油とは何が違いますか
違いは付加した酸化エチレンの量で、EOが多いほど水になじむ性質(親水性)が強くなります。原料メーカーの掲載値では、同じ系列でHLBがEO40=12.0〜12.5、EO50=13.0〜13.5、EO60=14.0と並び、本成分はその間に入ります(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。日光ケミカルズの案内ではEO40が「アルコールの多い系」、EO50とEO60が「アルコールの少ない系」の可溶化剤とされています。どれが上位というわけではなく、処方に合わせて選ばれるグレードの違いです。
Q3. 医薬部外品の成分表にPEG-50水添ヒマシ油が見当たりません。入っていないのですか
医薬部外品では、水添ヒマシ油にEOを付加した成分は「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」というEO数を区別しない名前で表示されることがあります(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 連番2009)。本成分の原料もこの名前を部外品申請成分名としているため、部外品の成分表では「50」かどうかは読み取れません。名前が見当たらないことは、入っていないことの証明にはなりません。
Q4. 「イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油」は同じ成分ですか
別の成分です。イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油は水添ヒマシ油のイソステアリン酸エステルにEOを付加したもので、表示名称リストの配合目的は「乳化剤、非水系増粘剤」と、本成分(香料、洗浄剤、可溶化剤)とは登録が違います(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)。成分表で名前の前に脂肪酸名が付いているかどうかで見分けてください。
Q5. PEGは1,4-ジオキサンが残っていて危ないと聞きました
CIRはPEG構造を持つ成分について、エチレンオキシドと微量の1,4-ジオキサンが不純物として残る可能性に懸念を示し、配合前の精製を続けるべきだとしています(出典: CIR 2014)。これは成分そのものの毒性ではなく原料の精製の問題で、CIRは本成分を含むPEG化油を、非刺激性に処方される場合に現在の使い方で安全と結論しています。成分表から精製度は分からないため、気になる場合は管理体制の確かなメーカーの製品を選ぶのが現実的です。
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本記事に関する注記
- 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
- 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
- 本記事のHLB値・形状・用途の案内は、Cosmetic-Info.jp 原料データベースに掲載された各原料メーカーの情報に基づきます。原料ごとに値が異なり、製品に使われている原料は成分表示からは特定できません。
- 本記事が参照する『医薬部外品の成分表示名称リスト』は平成20年3月25日版であり、最新版では収載状況が変わっている可能性があります。
- 本記事が参照するCIRの報告書は、2014年に International Journal of Toxicology に刊行された版(Safety Assessment of PEGylated Oils as Used in Cosmetics)です。この報告書の結論は1997年の旧結論を置き換えています。同報告書の使用頻度・濃度の表には、本成分の個別の行を確認できませんでした。
- 本記事に含まれる製品数の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。全成分表示は1%以下の成分を順不同で記載できるため、配合順位から配合量を読むことはできません。
- 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。PEG-50水添ヒマシ油は医薬部外品の有効成分ではありません。
- 外部の安全性評価(CIR等)は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。